「ルーカス様。そろそろ仕事をしてください」
〝雨……口付け……〟なんて、ぶつぶつ言うルーカスを、ジャレットが引きずっていく。
「あっ、おい。俺はまだ、愛しいライラと……」
「後で、甘いココアでも用意するわよ」
「なんだって!!聞いたか、ジャレット。ライラが……番のライラが、お茶に誘ってくれたぞ!!」
ちょろい……
「よかったですね。それじゃあ、早く仕事を片付けてしまわないといけませんね」
「そうだな。ライラ、待っていてくれ」
「はいはい」
ルーカスの言葉を適当に流しながら、自分の仕事にもどる。
忙しい時間帯だ。けれど、多少ルーカスの邪魔が入ったとしても、マリアーナがてきぱきと動いてくれるおかげで、客を待たせることなく捌けている。
「マリアーナはよく気がきくし、客の評判もなかなかいいな」
すっかり保護者役になっているアルフレッドが、満足そうに頷いている。
「そうね。きっとこれまで、身の回りのことは全て自分でこなしてきたんでしょうね。すぐに戦力になってくれたわ」
マリアーナが働くことに慣れているのは、見ていればわかる。でもその反面、王族らしい育ちの良さも見て取れる。言葉遣いといい、ちょっとした所作が綺麗だし、マナーも完璧だ。虐げられてきた中でも、王妃や乳母は、彼女をちゃんと王女として接したのだろう。
「ライラだって私の見る限り、戸惑うことなく働いていた気がするが」
「えっと……まあ、そうね。貴族令嬢らしくなんて言われて、やらせてもらえなかったけれど、本来、働くことは嫌じゃないわ。それに……」
はじめて水晶を手にした日、自分の前世が見えて、色々と思い出したなんて話、アルフレッドは信じるだろうか?
「どうした、ライラ?」
「えっと……水晶を手にした時に、私の前世を見せられたのよ。前世で私が生きた世界は、男女に関係なく働くのが普通だった」
「ほおう、前世か……」
「信じられないわよね?こんな話」
「いや。ライラが嘘を付くなんてことはないから、本当のことなんだろ?」
「う、うん」
こんな突拍子もない話を、疑うことなく信じるっていうの?
一度は私のことを信じてくれなかったアルフレッドだけど、今はすっかり信頼を寄せてくれているようだ。彼に対して、一時は呆れたりいろいろと諦めたりしたけど、今ならあの頃とはまた違った良い関係を築けそうだ。
〝雨……口付け……〟なんて、ぶつぶつ言うルーカスを、ジャレットが引きずっていく。
「あっ、おい。俺はまだ、愛しいライラと……」
「後で、甘いココアでも用意するわよ」
「なんだって!!聞いたか、ジャレット。ライラが……番のライラが、お茶に誘ってくれたぞ!!」
ちょろい……
「よかったですね。それじゃあ、早く仕事を片付けてしまわないといけませんね」
「そうだな。ライラ、待っていてくれ」
「はいはい」
ルーカスの言葉を適当に流しながら、自分の仕事にもどる。
忙しい時間帯だ。けれど、多少ルーカスの邪魔が入ったとしても、マリアーナがてきぱきと動いてくれるおかげで、客を待たせることなく捌けている。
「マリアーナはよく気がきくし、客の評判もなかなかいいな」
すっかり保護者役になっているアルフレッドが、満足そうに頷いている。
「そうね。きっとこれまで、身の回りのことは全て自分でこなしてきたんでしょうね。すぐに戦力になってくれたわ」
マリアーナが働くことに慣れているのは、見ていればわかる。でもその反面、王族らしい育ちの良さも見て取れる。言葉遣いといい、ちょっとした所作が綺麗だし、マナーも完璧だ。虐げられてきた中でも、王妃や乳母は、彼女をちゃんと王女として接したのだろう。
「ライラだって私の見る限り、戸惑うことなく働いていた気がするが」
「えっと……まあ、そうね。貴族令嬢らしくなんて言われて、やらせてもらえなかったけれど、本来、働くことは嫌じゃないわ。それに……」
はじめて水晶を手にした日、自分の前世が見えて、色々と思い出したなんて話、アルフレッドは信じるだろうか?
「どうした、ライラ?」
「えっと……水晶を手にした時に、私の前世を見せられたのよ。前世で私が生きた世界は、男女に関係なく働くのが普通だった」
「ほおう、前世か……」
「信じられないわよね?こんな話」
「いや。ライラが嘘を付くなんてことはないから、本当のことなんだろ?」
「う、うん」
こんな突拍子もない話を、疑うことなく信じるっていうの?
一度は私のことを信じてくれなかったアルフレッドだけど、今はすっかり信頼を寄せてくれているようだ。彼に対して、一時は呆れたりいろいろと諦めたりしたけど、今ならあの頃とはまた違った良い関係を築けそうだ。


