* * *
「わ、私の、つ、妻が……人間なんですけど、最近、私の仕事中に出かけているようで……いや、他の雄の匂いがするとか、そんなことはないので、浮気を疑ってることなんて、し、してないんです。これっぽっちも」
だんだん震える小声になっていく姿が、少々痛ましい。
しゅんと首を垂れているのは、占いのお客。ウマの獣人だ。がたいの良い男性がこうもしょげかえっている姿は、なかなかだ。悩みが悩みなだけに、決して〝可愛い〟だなんて、思わず抱いた感想を口にすることはしない。
パートナーが人間なだけに、たとえ番になれたとしても、心配は尽きないのだろう。人間は、心変わりすることもあるから。
それにしても、この悩みに対してどんな場面を想像して占えばいいのかしら?ご主人が仕事に出ている間に出かけるといったら……もちろん、浮気じゃない前提で。
友人とお茶をしてる?それとも、仕事をはじめた?私の想像なんて、それぐらいだ。とりあえず、ご夫婦が仲良くしている未来の姿が見られるといいのかも。自分の願望を出しすぎるのはあまり良くないけれど、そんなことを考えながら水晶に集中していく。
しばらくすると靄がかかっていき、やがて少しずつなにかが見えてきた。
これは……どこかの室内みたい。壁一面が明るく飾り付けられている。お祝い事かしら?テーブルに並べられているのは、豪華な料理。中央にはお花も飾られている。そこに、驚いた顔をして立ち尽くす、この依頼者さん。それを満面の笑みで、両手を広げて迎え入れる女性。和やかに時は流れ、女性がこの人にプレゼントを渡していた。
やっぱりね。ご主人になにかプレゼントをするために、奥さんは準備をしているのよ。きっと、その日のためにこっそりと。なんていうのは、大半が私の想像だし、奥様のためにも今は伝えられないけど。
「今、あなたと1人の女性が見えています。そうですね……服装から、季節は進んでいないので、それほど遠くない未来でしょう。とても長いオレンジがかったブラウンの髪を一本の三つ編みにした女性です」
「そ、それは、私の番です。その髪型、毎朝私が結ってあげてるんです」
「そうですか。とっても仲が良いんですね。お二人とも、幸せそうに微笑み合って……特別な1日を過ごしてるようですよ」
おっと、言いすぎたかしら?ちらりと依頼主を見ると、あまりに思い詰めてやってきたせいか、私の言葉になにかを察した様子はない。
「わ、私の、つ、妻が……人間なんですけど、最近、私の仕事中に出かけているようで……いや、他の雄の匂いがするとか、そんなことはないので、浮気を疑ってることなんて、し、してないんです。これっぽっちも」
だんだん震える小声になっていく姿が、少々痛ましい。
しゅんと首を垂れているのは、占いのお客。ウマの獣人だ。がたいの良い男性がこうもしょげかえっている姿は、なかなかだ。悩みが悩みなだけに、決して〝可愛い〟だなんて、思わず抱いた感想を口にすることはしない。
パートナーが人間なだけに、たとえ番になれたとしても、心配は尽きないのだろう。人間は、心変わりすることもあるから。
それにしても、この悩みに対してどんな場面を想像して占えばいいのかしら?ご主人が仕事に出ている間に出かけるといったら……もちろん、浮気じゃない前提で。
友人とお茶をしてる?それとも、仕事をはじめた?私の想像なんて、それぐらいだ。とりあえず、ご夫婦が仲良くしている未来の姿が見られるといいのかも。自分の願望を出しすぎるのはあまり良くないけれど、そんなことを考えながら水晶に集中していく。
しばらくすると靄がかかっていき、やがて少しずつなにかが見えてきた。
これは……どこかの室内みたい。壁一面が明るく飾り付けられている。お祝い事かしら?テーブルに並べられているのは、豪華な料理。中央にはお花も飾られている。そこに、驚いた顔をして立ち尽くす、この依頼者さん。それを満面の笑みで、両手を広げて迎え入れる女性。和やかに時は流れ、女性がこの人にプレゼントを渡していた。
やっぱりね。ご主人になにかプレゼントをするために、奥さんは準備をしているのよ。きっと、その日のためにこっそりと。なんていうのは、大半が私の想像だし、奥様のためにも今は伝えられないけど。
「今、あなたと1人の女性が見えています。そうですね……服装から、季節は進んでいないので、それほど遠くない未来でしょう。とても長いオレンジがかったブラウンの髪を一本の三つ編みにした女性です」
「そ、それは、私の番です。その髪型、毎朝私が結ってあげてるんです」
「そうですか。とっても仲が良いんですね。お二人とも、幸せそうに微笑み合って……特別な1日を過ごしてるようですよ」
おっと、言いすぎたかしら?ちらりと依頼主を見ると、あまりに思い詰めてやってきたせいか、私の言葉になにかを察した様子はない。


