占いお宿II 新たな契りを結ぶ時

「ライラ、占いの依頼だよ」

「わかったわ、ドリー。マリアーナ、少し抜けるわね」

「はい」

「あっ、おいライラ。俺以外の男と2人っきりになるなと、あれほど……」

「仕事です!!」

こんなやりとりも、もはやお約束となっている。

「ふふふ。ルーカスさんは本当に、ライラさんのことが好きなんですね」

「ああ、もちろんだ」

「報われるといいなあ」

茶化すように言う客に、〝させるか〟と返すアルフレッド。それをくすくす笑って見ているマリアーナに、カウンターでニヤリとしているドリー。それがここでの日常だ。




「ただいま」

夕方遅くに、ヨエルが帰ってくる。

「おかえり、ヨエル!!」

ここからは親子?の時間だ。この2人の関係に、恋仲な雰囲気は全くない。ここ1ヶ月ほど見てきて、よくわかった。まあ、叔父と姪の関係だし、そもそもそれはあり得ないことだけど。一つ言えることは、ヨエルはやっぱり過保護だということ。

「お疲れさま。夕飯を持ってくるわ」

「ありがとう」

すっかり明るくなったマリアーナに、ヨエルも満足そうだ。
生き生きと働くマリアーナの姿は、この店を活気づけてくれる。早くも看板娘となっていて、なんとも頼もしい限り。今の彼女からは、虐げられてきた幼少期なんて全く感じられない。それは彼女の元々の性格もあるかもしれないけれど、大切に守ってきた王妃と殿下、そしてヨエルという存在が大きいのだろう。

健気に働く姿は、客も従業員も自然惹きつけられる。そして、そんなマリアーナのことを、ヨエルも満足そうに見ている。