「そうか。シュトラスは、その点はかなり厳しいんだ。そんな国で生まれた俺は、かなり異質で公にできない存在だった」
ずっと目を伏せたヨエル。その表情には、長年の苦しみが滲み出ているようだ。
「俺の両親は貴族としては珍しく、想い合って結婚した。そして、エレオノーラが生まれた。エレオノーラは、ブラウン系の色を持つ両親の通りを受け継いだ。その2年後に生まれた俺は……ずいぶんと異質だった。この色だからな。誰もが母の不貞を疑ってもおかしくなかったはずだ。けれど、両親も使用人達も、誰一人として母を疑うことはなかったと聞いている。一つには、父が母を心から愛して、信じていたから」
ヨエルの言葉に、チクリと胸が痛んだ。
そう。本当に愛していたのなら、まずは全てを信じて欲しかった。
すっかり忘れた過去だと思っていたけれど、その傷はまだ完全には癒えていないのかもしれない。
「そして一つには、不貞を許さない国ということが大きかった。貴族間の足の引っ張り合いに巻き込まれることのないよう、いろいろと徹底されていた。どこの家でも、使用人達によって監視するんだ。夫婦がお互い信じているからこそ、少しでも疑いを抱かせないよう、自ら監視させるんだ。といっても、よほどのことがない限り夫婦の寝室は一緒だから、それほどギスギスしたものではないが。でも、そのおかげで母の潔白は完全に証明されている」
なかなか……生き辛い国なのかもしれない。なんか、一つのことに拘るあまり、凝り固まってしまっているようだ。
「それに俺のこの色は、調べてみれば母方の祖先を2、3辿ればいたんだ。おそらく、覚醒遺伝のようなものだろう。
しかし、家庭内では納得していても、外野は違う。一度母の不貞を疑われてしまえば、いくら弁解しようにも聞き入れられない可能性が高い。そこでやむを得ず、第二子を死産したことにした。代わりに俺は、母の縁戚から引き取った子だとされた」
本当に、そこまでしなければいけないことなのだろうか?確かに、グリージアでも不貞が公になれば、それなりの問題になるだろうけど。
実子なのに、そんな扱いをしなければならなかったご両親を思うと、いたたまれなくなってくる。
ずっと目を伏せたヨエル。その表情には、長年の苦しみが滲み出ているようだ。
「俺の両親は貴族としては珍しく、想い合って結婚した。そして、エレオノーラが生まれた。エレオノーラは、ブラウン系の色を持つ両親の通りを受け継いだ。その2年後に生まれた俺は……ずいぶんと異質だった。この色だからな。誰もが母の不貞を疑ってもおかしくなかったはずだ。けれど、両親も使用人達も、誰一人として母を疑うことはなかったと聞いている。一つには、父が母を心から愛して、信じていたから」
ヨエルの言葉に、チクリと胸が痛んだ。
そう。本当に愛していたのなら、まずは全てを信じて欲しかった。
すっかり忘れた過去だと思っていたけれど、その傷はまだ完全には癒えていないのかもしれない。
「そして一つには、不貞を許さない国ということが大きかった。貴族間の足の引っ張り合いに巻き込まれることのないよう、いろいろと徹底されていた。どこの家でも、使用人達によって監視するんだ。夫婦がお互い信じているからこそ、少しでも疑いを抱かせないよう、自ら監視させるんだ。といっても、よほどのことがない限り夫婦の寝室は一緒だから、それほどギスギスしたものではないが。でも、そのおかげで母の潔白は完全に証明されている」
なかなか……生き辛い国なのかもしれない。なんか、一つのことに拘るあまり、凝り固まってしまっているようだ。
「それに俺のこの色は、調べてみれば母方の祖先を2、3辿ればいたんだ。おそらく、覚醒遺伝のようなものだろう。
しかし、家庭内では納得していても、外野は違う。一度母の不貞を疑われてしまえば、いくら弁解しようにも聞き入れられない可能性が高い。そこでやむを得ず、第二子を死産したことにした。代わりに俺は、母の縁戚から引き取った子だとされた」
本当に、そこまでしなければいけないことなのだろうか?確かに、グリージアでも不貞が公になれば、それなりの問題になるだろうけど。
実子なのに、そんな扱いをしなければならなかったご両親を思うと、いたたまれなくなってくる。


