「シュトラス王国は、ここからずいぶん遠い。詳しく知らなくても無理はない。俺自身、こうして旅をしてなければ、この辺りの国のことは知らなかった」
この2人は、どれぐらいの間旅をしてきたのだろう。国を出ざるを得なかった理由はともかく、外の世界を知れたことは、すごく魅力的かもしれない。
「さっき、ライラの語ったことがほぼ全てだ。シュトラス王国の国王カレルヴォと、王妃エレオノーラに生まれた一人目の子どもが、ユリウス殿下。そして、俺はユリウス様の護衛をしていた。王妃の推薦でな」
「王妃の、推薦?」
別に疑ったわけじゃない。けれど、ヨエルはこちらの思いを察したのだろう。ふっと鼻で笑った。
「そして、2人の間に王女マリアーナが誕生した。国王夫妻は、いわゆる政略的な結婚だった。しかし、もとより気が合ったのか、2人の仲睦まじい様子は、結婚した直後より侍女や側近らから語られるほどだった。俺自身、2人の仲良さげな姿をたびたび目にしていたから、ホッとしていた。しかし……」
気遣うように、マリアーナに視線を向けたヨエル。彼に対してマリアーナは、〝大丈夫〟とでもいうように小さく頷いた。
「マリアーナが誕生して、少しずつ2人の間が拗れていった。理由は単純なこと。マリアーナの色だ。カレルヴォの瞳は黒みがかったブラウン。エレオノーラもユリウスもまたブラウン系だ」
「今見る限り、マリアーナの瞳も同じ系統だけれど?」
「これは魔女によって変えてあるんだ。マリアーナの本来の瞳の色は、透き通った紫。ああ、ちょうどライラのような。いや、俺のようなと言うべきか」
両親の瞳の色から考えると、確かに紫というのは違和感を覚えるかもしれない。そこにさらに、マリアーナと同じ色の瞳を持った男性の存在……さらにいえば、自分の息子の護衛に推薦するほど親しい異性がいたとしたら?不貞を疑ってしまう可能性は否定できない。
この2人は、どれぐらいの間旅をしてきたのだろう。国を出ざるを得なかった理由はともかく、外の世界を知れたことは、すごく魅力的かもしれない。
「さっき、ライラの語ったことがほぼ全てだ。シュトラス王国の国王カレルヴォと、王妃エレオノーラに生まれた一人目の子どもが、ユリウス殿下。そして、俺はユリウス様の護衛をしていた。王妃の推薦でな」
「王妃の、推薦?」
別に疑ったわけじゃない。けれど、ヨエルはこちらの思いを察したのだろう。ふっと鼻で笑った。
「そして、2人の間に王女マリアーナが誕生した。国王夫妻は、いわゆる政略的な結婚だった。しかし、もとより気が合ったのか、2人の仲睦まじい様子は、結婚した直後より侍女や側近らから語られるほどだった。俺自身、2人の仲良さげな姿をたびたび目にしていたから、ホッとしていた。しかし……」
気遣うように、マリアーナに視線を向けたヨエル。彼に対してマリアーナは、〝大丈夫〟とでもいうように小さく頷いた。
「マリアーナが誕生して、少しずつ2人の間が拗れていった。理由は単純なこと。マリアーナの色だ。カレルヴォの瞳は黒みがかったブラウン。エレオノーラもユリウスもまたブラウン系だ」
「今見る限り、マリアーナの瞳も同じ系統だけれど?」
「これは魔女によって変えてあるんだ。マリアーナの本来の瞳の色は、透き通った紫。ああ、ちょうどライラのような。いや、俺のようなと言うべきか」
両親の瞳の色から考えると、確かに紫というのは違和感を覚えるかもしれない。そこにさらに、マリアーナと同じ色の瞳を持った男性の存在……さらにいえば、自分の息子の護衛に推薦するほど親しい異性がいたとしたら?不貞を疑ってしまう可能性は否定できない。


