占いお宿II 新たな契りを結ぶ時

「ヨエル、もう一度聞くわ。もしあなたに何かあった時、マリアーナは一人で生きていける?」

きっと彼女は、自分の身の回りのことぐらい自分でできるだろう。けれど、さっきから不安になったり、動揺したりするたびにヨエルの服を掴んでいるのを見ると、一人立ちできるようには見えない。ついでにいえば、ヨエルの方もこれまでのことがあるせいか、マリアーナに対して過保護になっている気がする。

「……はあ……そう言われたら、なにも言い返すことができないな」

渋々ではあるものの、ヨエルは観念したようだ。マリアーナと〝仕方がない〟というように目を合わせると、再びこちらに向き直った。
それにしても、この2人の関係性って、どういうものなのかしら?王妃の不貞はなかったと感じてたけど……?

「あんた達のことを、今すぐ信用しろと言われても無理な話だが……そこの2人は、身なりから考えて嘘はついてないのだろ?ただ、なぜ王太子や王子がここにいるのかしらんが。2人に対するフランクすぎる態度も、よかわからんが……」

「この2人に対する態度は、ここがどこの国にも属していない場所だし、私自身もここの人間だから、身分なんて関係ないわ。それに、普通に接するのも彼らの希望でもあるし」

「そうか」

国を飛び出してきた人だけはある。この信じ難い説明に、〝そうか〟と一言で受け入れてるし。

「じゃあ、俺達もライラに従おう。俺達は、サンミリガンの人間でもグリージアの人間でもない。ここにいる間は、素で接する」

ルーカスとアルフレッドは、それでかまわないというように頷いた。本当に、気さくな2人だこと。