占いお宿II 新たな契りを結ぶ時

「ここは、さほど危険なことはないのだけど、こんな身分の人達が居着いちゃって……念のためにって、ドリーがこの辺り一体に結界を張ったの。だから、ここへは悪意を持った人間も獣人も、入ってくることができない。安全な場所よ」

ルーカスとアルフレッドに振り回される家臣達があまりにも不憫で、お情けでドリーが動いてくれたという裏事情は伏せておこう。

「それで、次は私のことね」

「ライラ・ガーディアン。俺の番だ。手を出さないように」

「ちょっと、ルーカス!!いい加減にしなさいよ。これじゃあ、信じてもらえないじゃない」

ああ。もう本当に、勘弁して欲しい。相手が男性となると、客だろうと身内同然な人だろうと、見境なく噛み付くようになったルーカス……まあ、それだけ彼の中に焦りみたいなものが大きくなっているのだろうけど……

「ごめんなさいね。この人の発言は気にしないで。えっと、私はライラ・ガーディアン。元はグリージアの人間で、今はここの従業員。宿の仕事をしながら、占い師もしてるの」

「占い師……」

「ええ、そうよ」

占い師という職業を、快く思わない人がいることは知っている。闇雲に人を惑わし、意図した方へ賛同させていく。そんなふうに良くない印象を抱いている人も、確かに存在する。ヨエルはどう思っているのだろうか。

「水晶を使って占うの。簡単なことだと、天気予報や無くし物のありかとか。少し複雑なことだと、商談に関することとか、家族の付き合い方だとかを占うよう頼まれることもあるわ」

それとなく付け加えた〝家族の付き合い〟という例えに対する2人の反応を伺う。ヨエルは僅かに眉間に皺を寄せ、マリアーナはちらりと私を見た後、さっと俯いてしまった。

「食べ終わったかしら?いろいろと、話をさせてもらいたいのだけれど?」

手早く食器をさげると、机の上に水晶を取り出した。ヨエルもマリアーナも、興味深そうに、それでも警戒心を解かないまま、それを見つめた。