占いお宿II 新たな契りを結ぶ時

「獣人であるルーカスなら、優れた嗅覚で毒の有無も嗅ぎ分けられるから、食事もここで大丈夫なんです。まあ、うちが変なものを出すわけないですが。あれ?ルーカス、ジャレットは?」

どうせなら、家臣であるジャレットもいた方がいいと尋ねてみた。

「今日は俺だけ泊まる。ジャレットは報告やら調整やらで、城に行ってる」

「そう。アルフレッドの護衛は?」

「ジャレットと同じだ。城にもどっている。この森の宿には、ドリーがいる。それがなにより安全だと、グリージアは知っている」

ヨエルの疑念を払うように、わざと声に出してわかりきったことを尋ねたことが、2人にも伝わったのだろう。こちらが望んだ返答を、すらすらと返してくれた。

「ドリーというのは?」

眉を顰めつつ、ヨエルが説明を求めてくる。

「ドリー」

カウンターに向かって声をかけると、〝なんだい〟と返ってくる。ドリーはあくまでこの席に混ざる気はないようで、カウンターでなにやら作業をしていた。

「ドリーは、この宿屋の女将なの」

食事を促しながら、居合わせた面々の説明をしていく。本題は後にするとしても、2人にはもう少し落ち着いてもらいたい。

ヨエルはルーカスが食べるのを見届けると、少しだけ警戒しながら肉を口に放り込んだ。それから、マリアーナと視線を合わせて、まるで〝大丈夫だ〟とでもいうように一つ頷く。そこではじめて、マリアーナも食事を口にしてくれた。

「ドリー、詳しく話しても?」

「かまわんよ」

それじゃあ、遠慮なく。

「ドリーは、マージュミアルの王女だったの。すごく大きな力を待っていて。まあいろいろあったようで、今ではこの、どこの国にも属さない緩衝地帯で、宿屋の女将をしてるのよ」

それから、ちらりとやんごとなき2人を見る。