「……そうなんですの。グリージアの王都には行ったことがないですけど、楽しそうですね」

「ええ。私も、王都に住みはじめたばかりなんですけどね。ぜひ一度、遊びに来てください」

なにこれ。いい感じじゃない?2人とも、満更でもなさそうだし。ミランダの過去を聞いても、ウォル兄様は拒絶しなかったみたいだし。

ちらっと父に目配せをすると、同じように感じたらしく、頷き返してきた。

「ウォル兄様もミランダも、話が尽きないみたいだし、向こうでゆっくり話してきたら?」

ここはサクッと占い用の部屋へ促すと、2人は〝それじゃあ〟なんて連れ立っていった。

「お父様……」

「いいんじゃないかな?グリージアは王族も恋愛結婚だしね」

「い、いいのか!?ライラ、ミランダだぞ!?」

おそるおそる、けれどどこかホッとしたようにルーカスが言う。それには答えず、視線で父に託す。

「私は、本人達がいいなら、それでかまわないよ」

どうやら、2人の仲はお父様公認となったようだ。




身内との再会は、すごく充実した時間になった。ずっと心配していたけれど、これでやっと安心できた。連れてきてくれたアルフレッドには、感謝しかない。

そしてもう一人、彼に感謝する人が……


「アルフレッド、お前はいいヤツだな!!」

ご機嫌のルーカスを、面倒そうに手で追い払うアルフレッド。

「おまえのためじゃない」

「アルフレッドのおかげで、ライラの父上に俺達の仲を認めてもらえたしな」

「いや。お父様も私も、なにも認めてないわよ」 

ルーカスには、都合の悪い私の言葉は聞こえていないらしい。

「ライラ!!さあ、呪いを解く口付けを!!」

「しないから。ていうか、今はカエルじゃないし」

カエルなら、なおさら無理だけど。

「次の雨天こそ!!」






それから数ヶ月して、ミランダは宿屋を辞めてグリージアへ向かった。ウォル兄様とは、密かに手紙のやり取りをしていたようで、短い期間とはいえ、しっかりと仲は深まっていたようだ。
ミランダが私の身内になるだろうことに、ルーカスとアルフレッドは僅かにたじろいだものの、おめでたい事だと祝福している。決して、これで困らされることはないという、自分本意の理由ではないと思う。たぶん。