占いお宿II 新たな契りを結ぶ時

「あっ、し、失礼した、お父上」

「ルーカス……普段の姿が全部もれてたから。今更取り繕っても無駄だと思うの」

「うっ……」

「いいじゃないですか。ここはどこの国にも属さない、緩衝地帯でしょ?それに、あなたはただの客、でしたよね?」

悪意のない人だとわかれば、父は細かいことなど気なしない。たとえ隣国の王子が、けっこう乱雑な口調であっても。子どもっぽくても。はっちゃけてても….

「素の姿で、私は気にしませんよ。いつも娘とどのように過ごしているのかを見られた方が、
私は嬉しいですしね」

「父上!!聞いたか、ライラ。父上が俺たちの仲を認めてくれたぞ!!」

一体、ルーカスの中でどんな解釈がされたのだろうか……どこをどう取ったらそんなふうに思えたのか、全くわからない。アルフレッドもヴィンセントもついてこれず、ルーカスを凝視している。〝こいつ、大丈夫か?〟なんて聞こえた気がするけど……気のせいにしておこう。

「ルーカス……私には時々、あなたが異世界の人のように見えるわ。その頭の中が、一体どうなっているのか、見れるものなら覗いてみたぐらい」

「ライラ!!」

目をキラキラとさせて、突然私の手を握りしめてくるルーカスに、思わずギョッとした。彼のスイッチがどこにあるのか……わからない。

「俺のことをもっと知りたいとか、嬉しすぎるぞ」

かまうだけ無駄だ。私とアルフレッドとヴィンセントの意見が一致した瞬間だ。

「お父様……察してください」






今夜父は、宿に泊まることになった。ヴィンセントの方は、帰らざるを得ないようだ。

「セシ……ライラ」

「ふふふ。どちらの呼び名でもいいわよ」

自分からセシリアと認めたんだもの。身内同然の彼なら、どちらの名で呼ばれてもかまわない。

「じゃあ、セシリア。明日はローズベリー家を継いだ、ウォルターを連れてくるから」

「ウォル兄様を!!ああ、すごく久しぶりだわ」

従兄弟のウォルターは、父が身を寄せた叔母の次男だ。父も認める優秀な人物で、もう何年も前より跡取りのいないローズベリー家を継いで欲しいと、父がずっとお願いしていた。

「楽しみにしてるわ」