「ライラ。明日、ここへ客人を連れてきてもいいだろうか?」

突然そう切り出したアルフレッド。お店を利用してくれるのなら、全くかまわないと伝えると、少しだけ気まずそうな顔をした。

「いや、そうではなくて。ライラに会わせたい人物がいるのだが……」

「私?どなたかしら?」

「それはまだ言えない。短時間でいいんだ。困らせるようなことはしないから、いいだろうか?」

「まあ……かまわないけど」

一体、誰を連れてこようとしているのだろうか?不安がないわけではないけれど、アルフレッドが私に酷いことをするわけがないことはわかっている。だからそれ以上追求せず、明日を待つことにした。





* * *

朝の営業を終えた頃、なにやら宿の外からガタゴトと響いてきた。横でまとわりついていたルーカスが、眉を顰める。

「なにかしら……」

ピタリと音が止んだしばらく後、入り口から顔を出したのはアルフレッドだった。

「おはよう、ライラ」

「おはよう……?なんか、賑やかな登場……え?」

「セシリア!!」

彼の後ろから姿を現した人物に、目を丸くした。

「ヴィンセント!?」

「久しぶりだな、セシリア」

突然やってきた幼馴染に状況がわからず、呆然としてしまった。その間にどんどん近付いてきたヴィンセントは、ガバリと抱き付いてきた。

「あっ、おい!!俺の番になにしてるんだ!!アルフレッド、どういうことだ?お前の国の騎士は、躾がなってないぞ!!」

ヴィンセントを引き剥がしながら喚くルーカス。その騒々しさに、ハッとする。

「アルフレッド、あっ、ジャレットも。ちょっとこの王子を抑えてて」

さすがに空気を読んだ二人は、今ばかりは私に従ってくれた。