「マージュミアルの魔女の中に、この大陸の王家に何やら依頼されたという者はおらんかった」

突然割り込んだ声に顔を上げれば、いつのまにか店のカウンターにドリーが座っていた。

「ドリー、それはどういうことなの?」

「つまり、ルーカスの推察が正しい可能性が高い、ということだ。魔女が暮らす国はそうはないが……おそらく、マージュミアル以外の国の魔女か……まあ、そんなところだろうな」

かつて、マージュミアルの王女だったというドリー。彼女の持つ魔力は、膨大なものだったらしい。詳しくは聞かないけれど、その膨大すぎる魔力で不都合が生じ、今はこの人里離れた森の奥で暮らしている。
そのドリーが、こんな情報をらもたらしたということは、わざわざマージュミアルへ行ったのか、なんらかの方法で連絡を取ってくれたのだろう。それは王女でありながら国を出てしまったいるドリーには、進んでやりたいことではなかったのかもしれない。

「ドリー、調べてくれてありがとう。だとしたら……それほど遠くの国のことを、どうして水晶は映し出したのか……」

「やっぱり、なにかライラに関係してくるんじゃないか?」

ルーカスの言う通りだと、自分でも思う。けれど、それがいつ、どういう形で降りかかってくるのかがわからない。なんとも落ち着かない。



そんな僅かに感じた不安は、数日後、一気に吹き飛ぶことになる。