「とにかく、今回のことも自分と無関係なことではないと思うの。これから、これは直感なんだけど、この話は未来ではなくて過去のことだと思うの」

「つまり、ヨエルとマリアーナは、既に国を出ていると?」

アルフレッドの問いに、頷いて返す。

「おそらく、だけどね。2人の行動は、私になんらかの影響をもたらすと思うの」

それがどんなものなのかは、全く想像がつかないけど。
水晶をここまで信じきっている自分ってどうなのか、と思うこともあるけれど、それでもやっぱりこれは現実のことだと確信してしまう。

「整理をすると……」

こういうところは、さすがアルフレッドだ。さっきルーカスとやり合っていた時とは空気が違う。さっと要点をまとめていくその姿は、公務に向かう時と同じだ。

「ヨエル達の国がどこなのかを突き止める手掛かりをあげる。まず、国王と王妃には、王子と王女が誕生している」

確認するように話すアルフレッドに、私もルーカスも頷く。ドリーはお茶を啜りながら、静かに聞いている。

「国王夫妻と王子は、ブラウン系の髪と瞳。そして、王女は紫の瞳で、名はマリアーナ。王妃の名は、エレオノーラ」

「そうよ。けれど、成長したマリアーナは、ダークブラウンの瞳になっていたわ。髪も、両親譲りのブラウン系よ」

「そんなふうに、色が変わることなんてあるのか?」

ルーカスが口にした疑問は、誰もがひかかることだ。

「多少、色味が濃くなったり薄くなったりはあるが、全く色が変わってしまうのは聞いたことないな」

一言も話さないドリーを、ちらりと見た。そしたら、ふと視線を上げた彼女と、バチっと目が合った。

「変えることは可能だ」

「変える?髪を染めるとかならともかく、瞳の色を?」

そんなこと、できるのだろうか?