「でもそれって……辛いわね」

「どういうこと?」

思わずこぼした言葉に、ルーカスが反応した。

「万が一、番の人間が裏切ったとしても、獣人はやっぱりその人しか想えないんでしょ?」

「まあ、そうだな。だが、獣人は番にそうされないように、相手に尽くすんだ。可能な限り一緒に過ごし、想いはいつも伝える。なあ、ライラ。俺の番。愛してる」

突然ぐいっと肩を抱き寄せらて、慌ててしまう。 

「ちょっ、ちょっと、ルーカス!!」

そうだった。忘れたわけじゃないけれど、ルーカスは私を番に認定しているんだった。

「おい、ルーカス!!ライラから手を離せ」

こうなってしまえば、しばらく放置するしかない。やいやいやり合う2人を、呆れながら眺めた。


「やっぱり、ガキだな」

ドリーに再び同じことを言われ、渋々席にもどる2人は、本当に仲がいいんだか、悪いんだか。
2人が落ち着いたのを見届けて、話を続ける。

「水晶が映像だけじゃなくて音声まで伝えてきたのは、これがはじめてなの。私ね、これまで何回か自分の意思とは関係なく、こうした映像を見せられることがあったんだけど、こういう時って、自分にとってなにか転機になることが多いというか……」  

さすがにここで、アルフレッドの婚約者になるまでの未来や、それを破棄される様を見たことは言い辛い。アルフレッドもそれを察したのか、若干気まずそうにしている。