「マリアーナ。俺と一緒に、この国を出よう。ここに、あなたの幸せはない」
「私の、幸せ?」
自分の幸せなんて考えたこともなかったであろうマリアーナは、ヨエルの言葉に不思議そうな顔をしている。
「そうだ。あなたも俺も、この国では幸せになれない。だから私は、あなたをこの国の外へ連れて行きたい」
この納屋と城の離れの狭い部屋しか知らないマリアーナ。少し迷った顔をしていたけれど、少なくともヨエルの必死さだけは伝わったようだ。
「ここを出ても、生きていくためにはそれなりに苦労もすると思う。けれど、ここにはない、未来への希望があるんだ」
「……私は……幸せとか未来とか、よくわからないんです」
「それは、あなたの生い立ち上、仕方のないことかもしれない。けれど、一つ確かなことは、ここにいればずっとこのままだ。いや、環境は悪化するかもしれない。そんなこと、あなたの母上も兄上も乳母も望んでいない。願うのは、あなたの幸せだけ。あなたには、いろんな世界を見聞きして、あなた自身が進みたいと思った未来を、自ら掴み取って幸せになって欲しいと、亡くなられた王妃様は仰っていた」
ヨエルの真剣な表情に、マリアーナの瞳が揺れる。怯えから不安。それが戸惑いに変わり、困惑する。そして、母や兄達の望みを聞いて、その瞳の中に小さな希望の光が灯ったのを、ヨエルは見逃さなかった。
「俺には、城で暮らすような王女様の暮らしはさせられない。けれど、もし俺の手を取ってくれるのなら、今より遥かに明るい未来を約束する。どうか、俺と一緒にこの国を出て欲しい」
突然ヨエルに手を握られたマリアーナは、ビクッと体を揺らした。けれど、その温かみに僅かな安堵を見出したのか、次第に体の強張りを解いていく。
「ついていっても、いいのでしょうか?」
震える小さな声は、まだ不安が滲んでいる。
狭い限られた世界しか知らないマリアーナにとって、この一言がどれほど大きな一歩だったことか。おそらく彼女は、はじめて他人に自分の希望を伝えたのだと思う。
「俺が、あなたを連れ出したいんだ」
「……よろしく、お願いします」
「私の、幸せ?」
自分の幸せなんて考えたこともなかったであろうマリアーナは、ヨエルの言葉に不思議そうな顔をしている。
「そうだ。あなたも俺も、この国では幸せになれない。だから私は、あなたをこの国の外へ連れて行きたい」
この納屋と城の離れの狭い部屋しか知らないマリアーナ。少し迷った顔をしていたけれど、少なくともヨエルの必死さだけは伝わったようだ。
「ここを出ても、生きていくためにはそれなりに苦労もすると思う。けれど、ここにはない、未来への希望があるんだ」
「……私は……幸せとか未来とか、よくわからないんです」
「それは、あなたの生い立ち上、仕方のないことかもしれない。けれど、一つ確かなことは、ここにいればずっとこのままだ。いや、環境は悪化するかもしれない。そんなこと、あなたの母上も兄上も乳母も望んでいない。願うのは、あなたの幸せだけ。あなたには、いろんな世界を見聞きして、あなた自身が進みたいと思った未来を、自ら掴み取って幸せになって欲しいと、亡くなられた王妃様は仰っていた」
ヨエルの真剣な表情に、マリアーナの瞳が揺れる。怯えから不安。それが戸惑いに変わり、困惑する。そして、母や兄達の望みを聞いて、その瞳の中に小さな希望の光が灯ったのを、ヨエルは見逃さなかった。
「俺には、城で暮らすような王女様の暮らしはさせられない。けれど、もし俺の手を取ってくれるのなら、今より遥かに明るい未来を約束する。どうか、俺と一緒にこの国を出て欲しい」
突然ヨエルに手を握られたマリアーナは、ビクッと体を揺らした。けれど、その温かみに僅かな安堵を見出したのか、次第に体の強張りを解いていく。
「ついていっても、いいのでしょうか?」
震える小さな声は、まだ不安が滲んでいる。
狭い限られた世界しか知らないマリアーナにとって、この一言がどれほど大きな一歩だったことか。おそらく彼女は、はじめて他人に自分の希望を伝えたのだと思う。
「俺が、あなたを連れ出したいんだ」
「……よろしく、お願いします」


