マリアーナ達は、一軒のお屋敷にたどり着いたようだ。けれど、両手をあげて歓迎されているわけでないことは、一目でわかった。
マリアーナは、掃除に洗濯に、本来なら使用人の仕事をその小さな体で懸命に手伝っていた。服もお下がりなのか体型に合っておらず、すり切れている。気付けば、彼女の生活の中に乳母の姿が全く見えなくなった。
食事も使用人と席を同じくしている。しかも、隅の狭いスペースだ。彼女だけ、メインのおかずがないこともあるようだ。
夜は納屋のようなところで過ごし、隙間風が寒いのか、小さな体をぎゅっと縮ませている。
マリアーナは日に日に表情を失っていった。その瞳には、もう色を映していないのかもしれない。笑みどころか、涙さえ見せない。見ていて胸が締め付けられてしまう。
「マリアーナ!!」
ある晩、彼女の寝泊まりする納屋に突然飛び込んできたのは、厳つい体付きの男だった。ピクリと肩を揺らしたマリアーナは、怯えた目付きで男を見上げる。
「すまない、マリアーナ。怖がらないでくれ」
この声って……
「俺の名はヨエル。あなたがまだ産まれたばかりの頃、あなたの兄上の護衛をしていた」
「お兄様の?」
「そうだ。その後、辺境の地へ赴いていた。少し前に、殿下からマリアーナがここにいることを聞いた。殿下もなんとかして、あなたを迎えに行きたがっていたが、未だ叶わず。身動きが取れずにいたところで、あなたの乳母がこっそりここでの様子を伝えにきたようだ。そして、俺にもそれを伝えられた」
〝乳母〟と聞いたせいか、マリアーナが僅かに気を許したのを見てとったヨエルは、周りにざっと目を走らせ、眉間に皺を寄せた。まるでギリギリと音が聞こえてきそうなぐらい、歯をぐっと食いしばっている。
「なぜあなたが、このような扱いを……」
悔しげに吐き出したヨエル。それも当然なことだ。王女であるはずのマリアーナが、こんな使用人同然の……ううん、それ以下の扱いを受けているのはおかしい。
たた、本来王女として扱われてこなかったマリアーナは、この現状を逆らわずに受け入れているようだけど……
マリアーナは、掃除に洗濯に、本来なら使用人の仕事をその小さな体で懸命に手伝っていた。服もお下がりなのか体型に合っておらず、すり切れている。気付けば、彼女の生活の中に乳母の姿が全く見えなくなった。
食事も使用人と席を同じくしている。しかも、隅の狭いスペースだ。彼女だけ、メインのおかずがないこともあるようだ。
夜は納屋のようなところで過ごし、隙間風が寒いのか、小さな体をぎゅっと縮ませている。
マリアーナは日に日に表情を失っていった。その瞳には、もう色を映していないのかもしれない。笑みどころか、涙さえ見せない。見ていて胸が締め付けられてしまう。
「マリアーナ!!」
ある晩、彼女の寝泊まりする納屋に突然飛び込んできたのは、厳つい体付きの男だった。ピクリと肩を揺らしたマリアーナは、怯えた目付きで男を見上げる。
「すまない、マリアーナ。怖がらないでくれ」
この声って……
「俺の名はヨエル。あなたがまだ産まれたばかりの頃、あなたの兄上の護衛をしていた」
「お兄様の?」
「そうだ。その後、辺境の地へ赴いていた。少し前に、殿下からマリアーナがここにいることを聞いた。殿下もなんとかして、あなたを迎えに行きたがっていたが、未だ叶わず。身動きが取れずにいたところで、あなたの乳母がこっそりここでの様子を伝えにきたようだ。そして、俺にもそれを伝えられた」
〝乳母〟と聞いたせいか、マリアーナが僅かに気を許したのを見てとったヨエルは、周りにざっと目を走らせ、眉間に皺を寄せた。まるでギリギリと音が聞こえてきそうなぐらい、歯をぐっと食いしばっている。
「なぜあなたが、このような扱いを……」
悔しげに吐き出したヨエル。それも当然なことだ。王女であるはずのマリアーナが、こんな使用人同然の……ううん、それ以下の扱いを受けているのはおかしい。
たた、本来王女として扱われてこなかったマリアーナは、この現状を逆らわずに受け入れているようだけど……


