それから水晶は、数年後のマリアーナを映し出していた。5歳ぐらいだろうか?赤ん坊の時に想像した通りの美少女だ。ダークブラウンの波打つ豊かな髪は、惚れ惚れするほど美しく、色白な彼女によく映えている。ぱっちりした大きな瞳は……
「え?どういうことなの?」
髪と同じ、ダークブラウンだった。
瞳の色が変わった?そんなこと、あり得ることなのだろうか?ううん。あるはずない。成長と共に、髪や瞳の色が多少変化することはあっても、ここまでガラリと変わることなんて、見たことも聞いたこともない。
マリアーナは、相変わらずあの質素な離れで暮らしているようだ。そこには、幾分歳を重ねた乳母と……王妃の姿が見えない。留守にしているだけなのだろうか?それにしてはマリアーナも乳母も、暗い表情をしているんだけど……
「マリアーナ、すまない。開けるぞ」
ノックもままならないまま入ってきたのは、少し大人びた顔付きになった王子だった。
「お兄様!!」
愛らしいその顔は、その瞬間、涙に濡れていた
。それを見た王子も、瞳が潤みそうになっていた。けれど、彼は懸命にそれを堪え、妹を見据えた。
「母上は……天国へ……」
王妃が亡くなった。
水晶の見せる世界にすっかり入り込んでいた私まで、胸がズキリと痛んだ。
「病に苦しんだとはいえ、その苦しみが長引かなかっただけ、よかったのかもしれない」
マリアーナはコクリと頷いた。
「マリアーナ、今すぐ身の回りの荷物をまとめるんだ。母上がいなくなった以上、マリアーナの後ろ盾となるものはなにもない。私ではまだ、マリアーナを守ってやれない。悔しいが、力が足りない」
表情を歪める王子。
不義の子を疑われるマリアーナの居場所は、これでなくなってしまったのかもしれない。
「2人で一緒に、今すぐ行ってくれ。いつか、私がもっと力を付けた時、必ず迎えに行く。それまで、待っていてくれ」
王子はいくらばかりかの金貨を持たせると、密かに用意したであろう馬車に、マリアーナと乳母を乗せた。2人を乗せた馬車が見えなくなるまで、ずっと見送っていたその背中は、小さく震えていた。
「え?どういうことなの?」
髪と同じ、ダークブラウンだった。
瞳の色が変わった?そんなこと、あり得ることなのだろうか?ううん。あるはずない。成長と共に、髪や瞳の色が多少変化することはあっても、ここまでガラリと変わることなんて、見たことも聞いたこともない。
マリアーナは、相変わらずあの質素な離れで暮らしているようだ。そこには、幾分歳を重ねた乳母と……王妃の姿が見えない。留守にしているだけなのだろうか?それにしてはマリアーナも乳母も、暗い表情をしているんだけど……
「マリアーナ、すまない。開けるぞ」
ノックもままならないまま入ってきたのは、少し大人びた顔付きになった王子だった。
「お兄様!!」
愛らしいその顔は、その瞬間、涙に濡れていた
。それを見た王子も、瞳が潤みそうになっていた。けれど、彼は懸命にそれを堪え、妹を見据えた。
「母上は……天国へ……」
王妃が亡くなった。
水晶の見せる世界にすっかり入り込んでいた私まで、胸がズキリと痛んだ。
「病に苦しんだとはいえ、その苦しみが長引かなかっただけ、よかったのかもしれない」
マリアーナはコクリと頷いた。
「マリアーナ、今すぐ身の回りの荷物をまとめるんだ。母上がいなくなった以上、マリアーナの後ろ盾となるものはなにもない。私ではまだ、マリアーナを守ってやれない。悔しいが、力が足りない」
表情を歪める王子。
不義の子を疑われるマリアーナの居場所は、これでなくなってしまったのかもしれない。
「2人で一緒に、今すぐ行ってくれ。いつか、私がもっと力を付けた時、必ず迎えに行く。それまで、待っていてくれ」
王子はいくらばかりかの金貨を持たせると、密かに用意したであろう馬車に、マリアーナと乳母を乗せた。2人を乗せた馬車が見えなくなるまで、ずっと見送っていたその背中は、小さく震えていた。


