占いお宿II 新たな契りを結ぶ時

「水を飲もう」

とりあえず、抗議をしたくても喉がカラカラで、声が出せそうにもない。ルーカスに支えられるまま体を起こし、手渡されたガラスの水を飲み干した。続けて、2杯、3杯と。

「何日経ったの?」

やっとの思いで声を発すると、ルーカスは気まずそうな顔をして〝3日だ〟と教えてくれる。そう。宿屋を出てここへ連れ込まれて、もう3日も経っていたのだ。その3日間、ここから一歩も出ることなく……


獣人は番を見つけるとすぐに蜜月は入ると、3日前にここで教えられた。いわゆる、マーキング。番を誰かに盗られないよう、自分の匂いを奥深くに付ける。
長いと1週間以上睦み合うこともあるとか。さすがに番が人間だと体力がもたず、今回は3日でとりあえず落ち着いたとのこと。そう。〝とりあえず〟だ。


「ライラ?」

まるで私の機嫌を伺うように、ルーカスが不安げに見てくる。
一応ね、こうなる前に彼は、私の父にも知らせを飛ばしたみたいだし、サンミリガンの国王にも宿屋にいた時点で知らせを出したらしいのよ。だから、自分の思い描いていた手順とは違うけど、やっておくべきことはしてくれていたのよ。まあ、その返事は一切受け取れてないけど。

「ラ、ライラ。ライラの父上からの伝言だ。〝幸せになりなさい〟と」

チラリと視線を向ければ、ピクリと肩を揺らすルーカス。私の心が読めず、恐る恐るではあるものの、ご機嫌取りをはじめたようだ。

少々遠慮がちに、私の顔にかかった髪をそっとどけてくれる。

「国王……父からは、落ち着いたら顔を見せてくれと……」

そりゃあ、私だって挨拶ぐらいは少しでも早くするべきだってわかってるわよ。けど、動こうとしても、体に全く力が入らない。歩ける気がしないのよ!!

「ラ、ライラ?」

一言も返さない私に、ルーカスはいよいよ不安になってきたようだ。