「ローラはどうやら、まだシュトラスにいるようだ。こっちにもどったら、母親孝行をしたいんだとさ」

さりげなくそう言ったドリーだったけれど、内心喜んでいることは、その瞳からわかる。

「ローラも、ある程度の占いはできる。まあ、少々鍛え直す必要があるけどな」

ということは、占いの仕事も引き継いでもらえるということだ。

「だから、ライラが望むなら……」

「いいのか、ドリー!!」

ドリーが言い終わる前に、思わず声を上げたルーカス。

「ああ。ライラが望むのならな。まあ、ここはいつだって人手があるし、いつだって人手を欲してる。残ってもかまわんがな」

ルーカスがジロリと見てくるのを、ドリーが楽しそうに、いや、意地悪そうにニヤニヤと見ている。ああ……この魔女は、確実に楽しんでるわね。

「ライラ」

〝もちろん、俺のところに来てくれるよな?〟
という、無言の圧力を感じるのは、私だけだろうか?思わずそろりと後ずさってしまう。

「な、なにかな、ルーカス」

「人手の心配も、占いの方の心配もなくなるらしい」

「そ、そうね」

予想より早かったみたいだけどね。

一歩ずつ私が後ずさる分、間合いを詰めてくるルーカス。圧が……圧がすごいから!!

「アルフレッドとマリアーナも、無事にまとまるようだ」

「ら、らしいわね」

〝で?〟とは聞き返さない。
さらに後ずさるも、背後の壁に退路を断たれてしまう。追い詰めるルーカスと、追い詰められる私。その様子を、ドリーだけでなく客達まで冷やかしながら見てくる。

ここに私の味方はいないのか……いや。敵がいるわけでもないけれど。