切なげに目を伏せたルーカスを見つめた。
番以外に受け入れられない、オオカミの獣人ルーカス。サンミリガン王国の第一王子。彼がもし、その立場の責務として、他の誰か……たとえば同族の女性と結婚することになったら……

「ライラ?」

無言になった私を心配したのか、ルーカスがそっと声をかけてくる。

「どうしたんだ?」

私よりも少し体温の高い彼の指が、そっと頬に触れてくる。

「なぜ泣いている?俺はそれほどまで、ライラを追い詰めているのか?」

「え?」

自身の手でそっと頬に触れてみれば、知らず知らずのうちに、涙に濡れていた。

「すまない、ライラ」

「ち、違うの」

この涙は、ルーカスのせいなんかじゃない。勘違いして欲しくなくて、首を大きく横に振った。

「私の存在が、ルーカスを苦しめていると思って……」

「それは違う。番の……ライラの存在は、いつだって俺を奮い立たせてくれる」

「ルーカス……ありがとう」

「事実だ」

もう。こうきっぱりと言い切ってくれちゃうとか……すごく、嬉しい。

「ルーカスは……一国の王子で、いずれ世継ぎの誕生が必要で……もし、もしね、私が悩んでいる間に、ルーカスが他の誰かと……同じ獣人の女性と結婚することになったらって考えたら……」

「ライラ?」