占いお宿II 新たな契りを結ぶ時

「ライラ、違う」

「なにが?」

「確かに、アルフレッドとマリアーナには幸せになって欲しい。けど、あいつらがひっついてくれなきゃ困る理由は、それだけじゃない」

友人として、ルーカスが2人を思う気持ちはわかる。けれど、2人の事情にルーカスはそこまで関係ないような……


「あいつらが片付かないと、ライラが俺に向き合ってくれない」

「へ?」

そこ?そんなことを思ってたの?

そっとルーカスの熱い眼差しを見て、しまったと思った。というより、〝そんなこと〟なんて軽々しく考えたことを、申し訳なく思った。

人間である私には、本当の意味では〝番〟という感覚がわからない。ルーカスの熱い想いも、一途に私を求めてくれていることも十分に伝わってくる。けれど、彼の心の内全てを理解しているわけじゃない。

「愛する番が常に側にいるというのに、意のままにならないもどかしさ。時折、気が狂いそうになる」

「ル、ルーカス?」

「アルフレッド達のことが片付いたら……それでも俺は、やっとスタート地点に立てるだけ。すぐにでもライラと番いたいのに、それができないもどかしさ」

いつも明るくて、王子らしい堅苦しさなんて感じさせないルーカス。それが今はどうだろうか?苦しげに顔を歪ませるルーカス。彼にこんな顔をさせているのは、紛れもなく私だ。彼の想いにはっきりとした答えを出さないまま近くにいたことは、苦痛でしかなかったのかもしれない。

「ライラから離れればいいのかとも考えた。けれど、城にもどっているだけで、ライラ身の安全が俺を不安にさせる。他の男に言い寄られてないかなんて考え出して、それこそおかしくなるぐらいに。横にいても、離れていてもその不安は変わらない」

「ルーカス……」

ルーカスの悲痛な叫びに、胸が締め付けられる。ああでもない、こうでもないと、未だに逃げ回っている自分が嫌になる。

ぐっと握りしめられているルーカスの手に、自分の手を重ねた。

「ライラ?」

ピクリと反応するルーカス。

私は彼とどうありたいのだろう。
もしルーカスが、もう二度と私の前に姿を現さないとしたら、私は平気でいられるのだろうか。

「俺は、ライラを責めてるわけじゃないんだ」

「わかってる」

きっと、私の顔も今のルーカスと同じように、苦しく見えるのだろう。

普段は強引なところもあるルーカスだけど、彼が私に番になるように強要することは一度だってなかった。いつもわたしを尊重してくれる。
そんなルーカスを苦しめたくないと思うのは私の本心で……