占いお宿II 新たな契りを結ぶ時

「来たな」

「なにが?」

ルーカスにつられるように、入り口に目を向けた。特に変わった様子はないけれど……

それから少しして、カタリとドアを開けて入ってきたのは……

「アルフレッド!?」

なんてことだ。この、どこの国にも属さない緩衝地帯の森の奥に、マージュミアルの元王女のドリーと、グリージアの王太子アルフレッド、サンミリガンの第一王子のルーカス、そして、シュトラスの王太子ユリウスという、やんごとなき4人がいる……

「ユリウス殿!?」

「ア、アルフレッド殿!?」

疲れ切っていたユリウスが、驚きなのか感激なのか、よくわからない声を上げる。うん。報われたね、ユリウス。

「よ、よかった……私は、私は……もしかしたら、もう、あなたに会えないまま、力尽きるのかと……」

「なんのことだ!?」

ここに辿り着くまでのユリウス達一行の事情を知らないアルフレッドは、訝しげに眉間に皺を寄せた。

「……大変だった、みたいよ。いろいろと」

「は?」

ユリウスがそのまま俯いてしまってから、一応私が口を挟んでみたけれど。そりゃ、そういう反応にもなるわよ。

「ユリウス殿?マリアーナは一緒ではないのか?」

「そ、それが……」

散々焦らされてきたアルフレッドが、無常にも疲れ切っているユリウスを、ギラリと見下ろす。

「この婚約に、なにか問題でもあるのか?カレルヴォ国王は、どうものらりくらりと、こちらの話を躱している気がするが」

「…………」



その後、カレルヴォの状態を聞いたアルフレッドは、もうこれ以上待てなとばかりに、すぐに指示を飛ばした。

「馬の用意と、それから陛下への伝令を。シュトラスへの先ぶれは……よい。知らせず向かうユリウス殿、あなたも行くぞ」

瞬く間に体制を整えると、アルフレッドは疲弊しきったユリウス一行を引きずって、シュトラスヘ出発した。