占いお宿II 新たな契りを結ぶ時

「今回は、サンミリガンを通ってきたのだが、まず、護衛の一人がトラの獣人だという女性に、いきなり番認定された。断っても断っても、散々追いかけ回され、なぜか私達も走り回り……」

「そ、それで?」

「結果的に、見捨ててきた」

「そ、そう」

ちらっと背後の護衛を見れば、2人とも顔が真っ青になっていた。おそらく、壮絶な追いかけっこが繰り広げられたのだろう。
見捨てたとはいえ、なにも敵の中に放置してきたわけじゃない。うん。大丈夫だろう。

「それはめでたいことだな」

ああ。この人は獣人だったと、隣のルーカスを見る。まるで自分のことのように、番を見つけたトラさんの幸せを喜んでいる。
だがしかし、その護衛本人にしてみたら……うん。これ以上ないほど尽くしてもらえるのなら、幸せなのかもしれない。この場の空気から、そんなことは言葉にしないけど。

「えっと……それから?」

「もう一人の護衛も……以下同文。何の獣人だか、わからずじまいだ」

それはそれは……なんとも言いようがない。もしかして、ルーカス程度の付き纏いは、可愛いものなのかもしれない。ユリウスらのヨレヨレ具合を見たら、そんなふうに感じてしまう。

「本来なら、グリージア城に向かうところだったが、もうそんな気力もなく。あわよくば、アルフレッド殿がこちらにいるかもと思って寄ったのだ」

「そ、そう」

それはまた……アルフレッドが不在だなんて、タイミングが悪かったわね……なんて気安く言えない。このくたびれきった3人に向かって、そんな非情なことは……