占いお宿II 新たな契りを結ぶ時

「嫁に出したくなくなっちゃった?」

私の直球の言葉に、ユリウスはコクリと頷いた。

「国内の相手だとしても嫌なのに、他国の、それも海を越えた国に嫁がせるなんて、ありえないと……」

「なんだそれ」

「ルーカス!!」

番至上主義の獣人には、理解しがたいことかもしれないけれど、人間なんてそんなものだ。

「一国の王として、王女を他国に嫁がせるなんて当たり前のことだと、頭では理解しているんだ。政略結婚が当然の世の中で、恋愛結婚できる幸運も、十分にわかっている。
けれど、それ以上に、父親としての気持ちが大きすぎて……母上の晩年も後悔していた分、マリアーナを可愛がりたいと……」

「そう。それは、大変そうね」

「アホらし」

「ルーカス!!」

私の足に添えられていた彼の手を、ペチリと叩いた。
2人の結婚は大丈夫なのだろうか?先行き不透明だ。

「身分を隠して、いち早くアルフレッドの元へ向かっていたのだが……ああぁぁぁ。獣人なんて嫌だ!!」

「ど、どうしたの?」
「どういうことだ?」

驚く私と、喧嘩腰になるルーカス。加えて背後で身構える護衛達。一体、なにかあったのだろうか?

「思い出したくもない」

これでもかというぐらい盛大にため息を吐いたユリウスは、ルーカスを一切見ないまま、重い口を開いた。