占いお宿II 新たな契りを結ぶ時

「マリアーナは、これからどうしたいと思う？」

それを彼女自身に尋ねたのは、アルフレッドだった。
ここにいる全員が、息を潜めるようにしてマリアーナを見つめた。それに緊張して体を強張らせたマリアーナ。隣に座るアルフレッドは、マリアーナを勇気付けるよう、手を握っている。

「わ、私は……ヨエルに、会いたい。それに、お父様とも話をしてみたい。でも、王女として暮らしたいわけじゃないわ。知らない人と、結婚したいわけでもない。ご、ごめんなさい」

ユリウスに対して、勢いよく頭を下げたマリアーナ。彼女の本音を聞いて、ユリウスは目を閉じてしまった。彼は一体、どんな結論を下すつもりなのだろうか。勇気を出して本音を伝えたマリアーナの気持ちを、わかってあげて欲しい。



沈黙に息苦しさを感じはじめた頃、ようやくユリウスが口を開いた。

「誰かに嫁がせることは……勝手に先走ってしまって、すまなかった。とりあえず、話は止めよう」

「と、とりあえず、ですか？」

思わずと言った様子で、マリアーナが口をさ挟む。そんな彼女を、ユリウスがちらりと見やる。
そこに何かを見てとったのか、ユリウスは続ける。

「いや。マリアーナが望まない限りは、だな。逆に、マリアーナに聞きたい」

そう言うと、彼女をじっと見つめたユリウスは、続いて隣に座るアルフレッドにも視線を向けた。

「な、なんでしょうか？」

「マリアーナが、父上やヨエルに会いたいことはわかった。それでは、その後はどうしたいのだ？シュトラスで暮らしたいのか、それとも他に希望があるのか？」

「希望……」

視線を宙に彷徨わせたマリアーナは、自分の手を握ってるアルフレッドに目を留めた。


「私……ここにいる皆さんとの生活が大好きなの。今の生活を、手放したくないの」

「それは……」

口籠もりながらアルフレッドに視線を向けるユリウスに、アルフレッドが反応した。