占いお宿II 新たな契りを結ぶ時

「それではマリアーナ。父上も、これまでのことを謝罪したいと申している。私と一緒に、シュトラスに帰ろう」

あまりにも一方的な宣言だ。
マリアーナは即答できずに、狼狽えている。

「い、今すぐに……ですか?」

「ああ。これだけ長く世話になったんだ。これ以上、迷惑もかけられまい」

「迷惑ではないぞ」

すかさず口を挟むアルフレッドに、私もルーカスも頷いた。 

「マリアーナは宿屋の従業員でもあるし、彼女を慕う常連客達も、突然いなくなると悲しむわ」

一国の王女だと判明している中、なかなかおかしな理由だとわかっていても、言わずにいられなかった。帰るにしても、もう少し猶予を与えてあげて欲しい。
アルフレッドと私が、真剣に引き止めようとしているのに、ドリーもローラもまるでおもしろいものを見ているような顔をしている。この2人、本当は血の繋がりがあるのではと疑いたくなるぐらい、実によく似ている。顔がというのではなく、言動が。

「だがしかし、父上もマリアーナの帰りを待ち望んでいる」

「ですが、ユリウス殿も長旅でお疲れでしょう。もう少しゆっくりされては?グリージアは歓迎しますよ」

「それは、ありがたいが……ヨエルもそろそろ暴れ出すかもしれん。やはりここは、一刻も早くもどるべきだ。宿屋の仕事は……」

「ユリウス、それは大丈夫よ。私、しばらくドリーの元にいるつもりだから」

「そうか!!」

ローラの申し出に、これはありがたい提案だと目を輝かせたユリウスに対して、アルフレッドの顔が引きつる。

マリアーナが帰ってしまうのは残念だけれど、ローラの申し出もあるし、これ以上粘っても仕方がないのかもしれない。

「マリアーナはどうしたいんだ?」

ここで聞き役に徹していたドリーが、おもむろに口を挟んだ。ドリーのいう通り、大事なのはマリアーナの気持ちだ。