占いお宿II 新たな契りを結ぶ時

「酷い扱いを受けていたとは、思いもよらなかった。すまなかった、マリアーナ」

「お、お兄様。お顔をあげてください。私、そんなに自分を悲観していませんから。あの時の経験があったから今があるの。ヨエルとの暮らしも、ちっとも苦じゃなかったわ」

「そうか……しかし、本来ならマリアーナは王女として城で暮らすはずだったのだ。それが、ずいぶんと苦労させて……」

「もちろん苦労がなかったとは言いません。けれど、それ以上に楽しいこともたくさんあるんですよ。特に、ライラをはじめ、ここで出会った方々は本当によくしてくださって……私の宝物なんです」

私達にとっても、マリアーナとの出会いは、かけがえのないものだ。周りをざっと見回したユリウスは、そんな気持ちを感じ取ったのか、少しホッとした表情を見せた。

「ここからが本題だ」

アルフレッドが再び仕切り直す。

「ユリウス殿はなぜ、マリアーナを追っていたのか?」

「ああ。私の話も聞いて欲しい」

ローラの後をユリウスが引き取った。

「マリアーナを救い出すために、ヨエルを頼った。しかし、マリアーナを取り巻く状況は、ヨエルの想像以上だったのだろう。ヨエルとマリアーナは、城にもどらず姿を消した。ちょうどその頃、国内がごたごたしていたこともあって、2人がいなくなったことを知ったのは、ずっと後になってからだった。既に2人は国外に出ており、その行方を探ろうにも全く情報が得られず、向かった方向ですらわからずにいた」

そこにローラがもどってきたのだという。
ローラに2人の動向を探らせている中で、2人が海を渡ってこの大陸に入ったことがわかり、すぐに後を追わせた。それが私が水晶で見た侵入者のようだ。

「私も探しに行きたかったが、国を離れるわけにもいかず、ただひたすら報告を待つしかなかった」

2人の生死すらわからない状況は、どれほど不安だったか。今のホッとしたユリウスを見れば、それが伝わってくる。