占いお宿II 新たな契りを結ぶ時

「ハーピーのことはわかったし、もう心配がないことも理解した。それでは本題の、ユリウス殿がなぜマリアーナを探していたかということだ」

ユリウスは、アルフレッドがマリアーナの名を呼び捨てるたびに、わずかに顔を顰めている。この様子からすると、ユリウスはマリアーナを何かに利用するような心づもりで追ってきたわけではなさそうだ。

「自分の実の妹を探すのは、当然のことだ」

真剣に言い放ったユリウスの言葉に、その場は沈黙した。なにから言えばいいのか、どこを突っ込めばいいのか……今更さらなのか、とすら思えてしまう彼の発言の威力は大きい。マリアーナがシュトラスの城を去ってから、どれほどの年月が経っていると思っているのか。


「もう、ユリウス!!それ、説明になってないから!!」

その沈黙を破ったのは、ローラだった。一国の王太子に対して、あまりにもフランクな態度をとる彼女。一体、どういう関係なのだろうか、と思ってハッとした。アルフレッドとルーカスに対する私の態度と、なにも変わらないわ。

「ローラ……」

ユリウスは、逆に呆れたような声を出す。

「それ以上でも、それ以下でもない」

「もう。こんなんだから、いろいろとこじれちゃうのよ。いいわ。私が代わりに説明してあげる。ドリーも、家を出てからのこと、聞きたくない?」

「ああ。聞かせとくれ」



* * *

ローラが森のお宿を出たそもそもの理由は、いたって単純だった。

〝世界中を見たかった〟

ドリーよりは劣るものの、それなりに強い魔力を持っているローラ。他の魔女と違って、マージュミアルの国外だったとしても、力が弱まることなかったという。そんな彼女が一切外の世界を知らず、出会いもない緩衝地帯の森の奥のお宿でおさまるはずもなく、必ずもどってくるという約束のもと、まだ見ぬ世界に飛び出した。