占いお宿II 新たな契りを結ぶ時

再びガチャリと開いた扉に、3人の視線が向く。話は終わったのだろうか?それとも、また誰かが呼ばれるのだろうか?

「とにかく、マリアーナに会わせてください!!」

扉の向こうで、若い男性の声が聞こえてくる。名前を言われたマリアーナは、ぎゅっと身を縮こませた。

「お待ちください、ユリウス殿。今お連れしますから」

ユリウス?思わず3人で目を合わせた。シュトラスの王太子が、自ら来ているというの?

「マリアーナ様、ルーカス様、ライラ様、と、うわっ……」

呼びに来た従者の肩を掴んでよけて、強引に姿を現したのは、ブラウンの艶のある髪に、それよりも濃いブラウンの瞳を持った青年だった。

「マリアーナ!!」

「……ユリウス、お兄様?」

ずんずんと近付いてきた青年は、その勢いのまま、マリアーナをガバリと抱きしめた。

「ああ、そうだ。ずっとマリアーナを探していた。元気でいてくれて、本当によかった」

「あっ、えっと……」

どう反応したらよいのか……マリアーナを含めて、3人の目が行ったり来たりする。状況が、全くわからない。

「ユリウス殿。ご安心されましたか?マリアーナも驚いていますから、一旦落ち着いてください」

珍しく弱りきった表情をしたアルフレッドが、声をかける。

「ちょっと待て。なんであなたが、私の妹をそのような呼び方で?」

「お、お兄様、お待ちください。アルフレッド様は、私に本当によくしてくださって、保護者というか、あ、兄のように見守ってくださって……って、そうだ、ヨエルは?1人でシュトラスに向かって以来、なんの連絡もなくて……」

じわりと瞳に涙を浮かべるマリアーナに、それまでのユリウスの勢が萎んでいく。

「え?あっ、う、うん……」

もう、ぐちゃぐちゃだ。
ヨエルを思って涙を浮かべるマリアーナ。興奮して大きな声を出したかと思えば、途端に狼狽出すユリウス。2人を諌めようとするアルフレッドに、下手に手を出せずにハラハラしている従者達。
ポカンとする私とルーカスに、どこか楽しんでいる様子のドリーと、同じような様子の若い女性。