「西から、さらに多数のハーピーご飛んできているようだ。さらに、シュトラスからこの大陸に向けて船が出港した可能性がある」

「それは……公にということか。ようやく、この追手の主が動いたと見て間違いないだろう」

「とりあえず、アルフレッドの許可があったから、この辺り一体をジャレットに見張らせている。追いつき次第、他の獣人兵も加わる予定だ。なにかあれば、知らせてくれる」

グリージアの騎士も、もちろん警戒を高めているが、獣人の嗅覚には敵わない。そこでアルフレッドはすぐさま、サンミリガンの兵士が入国し、王都内を見張る許可を出したのだ。



「マリアーナ」

話の区切りがついた頃合いを見計らって、ドリーがマリアーナに声をかけた。

「一つ聞きたい。シュトラスにいた、魔女の名前はわかるか?」

「魔女、ですか……名前まではわかりませんが……」

無理もない。彼女の〝色〟が変えられたのは、まだ赤ん坊の頃の話だ。

「ただ、若い女性だと聞いたことがあります」

ということは、その魔女がドリーの娘である可能性は十分にある。

「それがローラだとしたら……まあ、可能性の話だがな」

アルフレッドとルーカスからは見えない角度で、ニヤリとしてみせたドリー。これ、絶対になにか企んでるわ。


「とりあえず、今できることは城の守りを固めるぐらいか」

「そうだな」

「マリアーナは、引き続き城から絶対に出ないように。悪いが、中庭もダメだ。ハーピーが入ってくることも考えられる」

「はい」




翌日の朝、ジャレットからシュトラスからの客人がもう数日のうちに入国してくるだろうことが伝えられた。一体、目的はなんだというのか。