「だかな、ライラ。わしもそれが一番すんなりいくと思うぞ。いくらライラと名乗っても、中にはあらぬ疑いを抱く輩もいるだろう」

「あらぬ疑い?」

「ああ。王太子に復讐しに来たのかとな。しかも、サンミリガンを使って。だから、下手な嘘を並べるよりも、2人は婚約者で、両国の仲を深めるためのお忍び訪問。それがいい」

そんなとんでも理論が通用するのか……
そして、復讐って……

「まあ、そういうことだ」

どういうことだ!?たった一言で締めくくったドリーに、うんうんと頷くルーカス。この2人、なにか企んでない?



グリージア王城に到着して、ルーカスに対する認識を改めた。ルーカスの身分が物を言ったのか、足止めをされることなく、最も奥まで馬車で乗り付けた。
さあ、降りようとなったところで、ルーカスのデレが発動した。いえ、元からデレしかないんだけど。

「さあ、ライラ。おいで。足元が危ないからな。俺が抱き上げてあげよう」

「は?」

いや、むしろ老体であるドリーを抱き上げようよ。

婚約者に甘々な隣国の王子の姿に、出迎えた人達は相当驚いてる。加えて、姿を現したその婚約者に、ますます驚いていた。ううん。ギョッとしてた。

城内の人間には、アルフレッドから私のことが伝えられていると聞いたけど、それは一体どんなふうにだろう?セシリア・ローズベリーそのものの外見の女がライラと呼ばれ、隣国の王子に甘やかされている様子に、驚きを隠せないでいる面々を、そっと覗き見た。

この人達は、あの断罪の場に居合わせただろうか?どちらにしろ、ルーカスを迎えるために出てきた人達だもの。かなり身分が高いに違いない。ということは、ありもしない私の罪を追求した側の人間の可能性がある。驚きの中に滲むどこか怯えた様子は、もしかしたら、当時のことをルーカスが追求するとでも思っているのかもしれない。