「ライラ、占ってみろ」

ずっと口を閉ざしていたドリーが、おもむろに言った。

「わかったわ」

これまでも、ちょこちょこと水晶を覗いていた。けれど、漠然としすぎていたせいか、いまいち内容を掴めずじまいだった。
机の上に水晶を用意して、周りにいる人間の気配をシャットアウトする。そう、ルーカスとか、ルーカスとか……ルーカスとか。

「ルーカス、占っている間に私に触れるのは、やめてもらえるかしら」

隙あらば私に触れてくるルーカス。さすがに集中できないわ。

「す、すまない」

ここはちゃんと引いてくれたから、よしとしよう。
とりあえず、マリアーナのことに意識を集中していく。近い未来、彼女はどうなっていくのか。
もやがかかっていく水晶を、じっと見つめ続ける。やがてそれが晴れてくると、ドレスを纏ったマリアーナが見えてきた。

「これは……グリージアの城内ね。マリアーナは何をしているのかしら?……ああ、クリスティアナ様と過ごしているようよ」

特におかしな様子はない。クリスティアナ様が城にまだいらっしゃるということは、それほど先のことではないと思われる。

「え?」

水晶が映し出した内容に、思わず身を乗り出してしまう。

「どうした、ライラ」

ルーカスも心配そうに水晶を見つめる。が、彼にはなにも見えていないはずだ。

「ルーカスがいるわ。は?私まで……」

まさか……グリージア城に、再び私が足を踏み入れるなんて。もう二度とないと思っていたけれど……
そこでプツリと映像が消えてしまった。

「どういうことかしら……」

体を起こして、ポツリと呟く。
私とルーカスが、グリージア城へ行く意味はなにか……