占いお宿II 新たな契りを結ぶ時

これまで、想いを伝えてくるルーカスを軽く流してきたけれど、その時の彼の気持ちなんて考えてもみなかった。ルーカスは、どんな気持ちでいたのだろうか。
さっきまでの怒りが、嘘のように引いていく。


彼をここまで追い詰めたのは、間違い無く私だ。


「ごめんなさい……」

「……ライラ……」

「えっ?あっ、いや、違うの。お断りって意味では……」

私に拒否されたと思ったのか、私の肩を掴んでいたルーカサの手が、パタリと落ちた。

「これまで、あなたの気持ちをちゃんと考えようとしてなくって、ごめんなさい。ルーカスにこういう行動をとらせてしまったの、私のせいなのよね」

「違う。俺の自信のなさからだ」

「ううん。根本の原因は、私よ。ルーカスの言う通り、人間の私には〝番〟っていうのが本当の意味ではわからないもの」

瞳を揺らすルーカスの頬に、そっと触れた。

「立場の違いとか、そんな理由であなたを拒否したりしないって約束するわ」

「ライラ?」

「けれど私は、自分の気持ちだけで、なにもかもを投げ出すことはできないの。それは、他人がいくら大丈夫って言ってくれても、私は納得しない。お店のことも、占い師のことも、どうしていけばいいのかちゃんと考えたい」

「ああ、当然だな。ライラがここを大事にしていることはわかっている」

「時間が欲しいの」

時間をかけたら答えを得られるなんて保障はない。それでも、自分が納得いくまで考えて、どうしていくのかを考えたい。

「マリアーナのことが解決したら、ちゃんと向き合うわ。だからそれまで、時間が欲しいの」

「わかった。他でもない、ライラの願いだ。答えを出すまで、揺さぶったり強引なことをしたりしないと約束する」

少しだけ辛そうにしつつ、ルーカスは私の言い分を受け入れてくれた。

「ただ、俺がこうして想いを伝えることは許して欲しい」

ふんわりと私を抱きしめたルーカスは、私の耳元で囁いた。

「愛してる、ライラ」