占いお宿II 新たな契りを結ぶ時

「これから、どうしたものか……」

自分の曖昧だった気持ちの答えが、はっきりと目に見える形でわかってしまった。それと同時に、その相手であるルーカスにも伝わってしまった。
私の中で、自分の気持ちがはっきりするのと、番になるっていうのは別問題。ルーカスはああ言っていたけれど、いずれ国王になる人のところへ、そう簡単についていくわけにはいかない。ここの仕事だって、無責任なことはしたくない。

「はあ……」

ルーカスを助けたい一心で、今思えばとんでもない暴挙に出てしまったけれど、その先を考えてなさすぎた。
ルーカスにかけられた魔法が解けたのは、なにをおいてもよかったことなのは間違いないけれど……

自室にもどる途中ですれ違ったドリーには、全て知っているというような表情を向けられてしまった。〝うんと悩むといい〟という言葉付きで。やっぱりドリーに隠し事はできないみたい。


「ライラ!!」

そして、いつも以上にハイテンションなルーカスに、足止めを食らう。お風呂で自分の匂いが薄れたからと、抱きしめながらグリグリと頭を擦り付けてくる彼に、本当になんで好きになってしまったのかと、内心で呟いた。
これは、絆されたとでもいうのかな?出会った当初から〝番だ〟〟好きだ〟〝愛してる〟なんて、毎日のようにまとわりつかれてたし。


「ライラ、ルーカス様を受け入れてくたさって、ありがとうございます」

背後から現れたのは、ルーカスの忠実な家臣のジャレット。帰ってきてたんだ……って、なんか目が潤んでない!? 

「えっ、いやあ、まだ……」

「ああ。これで遠慮なく、いつでもライラといられる」

耳元で、ルーカスが不穏な言葉を発する。
そもそも、ルーカスが遠慮したことなんてあった?いや、ない。ほぼ毎日ここに入り浸っているのだから、宣言するまでもない。

「そうですね。早速、陛下にもお知らせしないと。王妃様共々、ずっと心配されていたので」

「ああ。2人を、やっと安心させてやれる」

「えっ、ちょっと……」

「このまま、私がもう一度城へ行きます」

「そうだな。アドルフも連れていってくれ」

「いや、だから……」

ルーカスの腕の中で必死にもがくも、敵うわけがない。私の頭に顎を乗せてくるから、顔を上げることもできず。

「それから、ハーピーの件も。早急に、別の者をアルフレッド様の元へ飛ばします」

「ああ、頼んだ」

「ちょっとぉー!!」

上からの圧力が緩んで、やっと大声を上げた頃には、もうジャレットの姿はなかった。