あんなにも楽しみにしていた誕生日はあっという間に呆気なく過ぎてしまって。
ただ心配なことはひとつ。
熱下がったかなぁ…って、それだけだ。
でもきっと千春さんが看てくれてるだろうし平気なはず。
私の看病なんかより、きっとずっとずっといい。
「とうとう負け認めちゃったし、この子」
「いまの私は…誰が見ても負けてる」
「…そうとも思わないけどねぇ俺は」
陽太は、優しい。
弱ってるときに優しくされると堪えていた涙が出そうになるから。
真剣にスーツを選ぶふりをして誤魔化した。
「だってずーっと復讐者として生きてきた男を立ち直らせたぐらいなんだよ、絃ちゃんは」
「…そうするつもりでしてないよ。私は本当にあのときはただそう伝えたくて言ってただけだもん」
「うん。だからこそ逆にすごいってことが分からないかな」
でも私なんか言葉だけだ。
実際、ナンパしてくる柄の悪い男たちを倒してしまえる物理的な強さは何もなくて。
熱を出してしまった大切な人にお粥を作ることさえもできなくて。
このままだと甘えてしまうだけ。
甘えて甘えて、彼が自分の力で上り詰めた場所に何もしてない私が運良く立ってしまうような。
……そんなの、バカだ。
「てかっ!!陽太の好きな子って誰!?ずっと気になってた…!!」
「絃ちゃんがよーく知ってる子だよ」
「え!?まさか本当に雅美さんをゲットしようとしてるの!?」
「ちがーう」



