「あ、おはよう絃ちゃん」
「……あのさぁ、昨日のさ、」
「え?なんのこと?」
翌日。
そいつはいつも通りの調子で挨拶してきて、いつも通りの調子でコテンと首を傾げた。
え、忘れてる?
それとも本当は見てなかった…?
いやいやいや、ガッツリ下着1枚の私と目が合いましたよねぇ…?
「ねぇ女の子ってさ、どーいうとこにデート行きたいもんなの?
水族館もいいし遊園地も好きだよね?」
「そうだねー」
「でも案外お金かけないとこのほうが好きだったりするかな?とくにお嬢様育ちとかだと」
「そうだねー」
「あの下着はやっぱりそういうつもりで買ったんだよね?絃織さんのために」
「そうだねー」
……って。
え………なんて言ったこいつ…!?!?
「な…っ!!やっぱり見てたんじゃんっ!!」
「そんなことよりさ、俺の質問に答えてよ。女の子ってどこに───」
「ぜっったい絃織には言っちゃだめだよっ!?秘密にしてね…!!わかった!?」
「はいはいりょーかい」なんて、興味なさげにうなずいてるけど。
こうして私が屋敷に戻った途端に人の部屋でゴロゴロするんだから陽太は。
それに私いま、いろいろ忙しいのに。
「黒…。うーん、やっぱりグレーもいいかなぁ」
「なに、結局就職にしたの?」
「うん」
「那岐 絃になるんじゃなくて?」
「……敗北を味わったんだってば」
座卓にスーツのパンフレットを並べて、どの色がいいかな、どのタイプにしようかな、なんて悩む日曜日。



