「あれ?絃ちゃんなんでここにいるの?てか誕生日おめでとー」
「ありがとっ!!!」
湯上がりの陽太に手を振り返して、そのまま駆け足で通りすぎる。
夜だったけどタクシーを使って屋敷に戻り、絃織にはメールをひとつ。
『進路に集中したいので帰ります』と。
勝手だとは分かってる。
そんなことは分かってる。
けど、なにも話してくれないし頼ってもくれない。
だったら私だって同じことをしてやろうと。
「あっ、お父さん帰ってたんだ!ちょうど良かったっ!」
「絃!?今日は向こうじゃないのか?誕生日だろう!」
「あのね!私決めたからっ!就職するっ!明日から就活するからよろしくっ!!」
「は!?ちょっ、絃!待ってくれ絃っ!」
誕生日おめでとう!と、言葉だけが追いかけてきたから「ありがとーー!」なんて返した。
決めた。
私は明日から就職活動をする。
まずはスーツを買いに行かなくちゃ。
そしたら先生にも言って、あぁいろいろ考えなくていいくらい忙しくなりそうだ。
「いーとーちゃんっ、ちょっと絃織さんから地獄級に着信が鳴り止まないんだけど───…って、」
「ぎゃぁぁぁぁぁあああ!!!!着替え中っ!!せめてノックして!?!?」
「あっ、ごっめーん」
そのままスパンっと閉まった襖。
………見られた。
完全に見られた。
このヒラヒラした下着…。
「…最悪だ…。明日から絶対からかわれる…」
どうせ出るとこ出てないだの、貧相だの無意味だの、そんなことを言ってくるに違いない。
まさかの絃織よりも先に陽太に見せることになるなんて…。
ほんっとーに、ツイてない日だ…。



