熱は移ってもいいけど、でも安静にしてなきゃいけないのに。
それに千春さんもいるってのに…!
何よりこんなにも無理してたことも知らなかった。
いつも話してくれない。
それはこういう形になる前から、ずっとずっとそう。
「んんっ…っ、ねつっ、あるのに…っ」
少しでもいいから頼ってほしいのに…。
今日だって、私の誕生日のためにいつも以上に無理したんでしょ…?
「…なるほど。ふたりはそういう関係だったのか」
「っ…!いやっ、これは…そのっ、」
咄嗟に唇から逃れた。
そんなものに気にしない素振りをして、千春さんはベッド脇に近寄ってくる。
氷水に濡らしたタオルを絃織の熱い額へとそっと置き、「とりあえず大人しくしていろ」と一言。
言葉とは裏腹に優しい動きはやっぱり女性のものだ。
「佐伯、…なんでお前がここにいんだよ」
「ここまで運んでやった命の恩人に言う台詞にしては生意気じゃないか?」
「…俺は倒れたのか」
「あぁ。なにをそんなに今日に限って急ぐ理由があったのか知らないが」
大事な連合会議だったってのに───と、難しい言葉にはついて行けそうにない。
それでもその理由を言わない絃織は「悪かった」と、それだけをこぼした。
「絃、だったな。悪いがキッチン借りるぞ」
「あっ、お粥なら私が───」
「作れるのか?かなりの料理本が散らばっていたが。それにお粥は本には載っていないと思うがな」
そんな言葉に、カァッと顔が赤くなった感覚がした。
それは恥ずかしさと情けなさ。
鼻で笑われたことに対する、どうしようもない葛藤が分かりやすく顔に出てしまったらしい。



