チクッと胸が傷んだ。
それは、その内容に対するものじゃない。
この女性が私の知らない絃織を知っていて、私以外を連れてきたことがないこのマンションに平気で入っていること。
そんなものにどこか腹立たしさも生まれて。
千春さんはこうして運んでくれたんだから感謝しなきゃなのに…。
「あとは私が看ます。千春さんも忙しいと思うから…」
「平気だ。タオルを借りていいか」
「えっ、あ、はい…」
そのままスタスタと寝室を出て行ってしまった。
するとゆっくり目を開いた絃織は私をぼーっと見つめて、なにかに気づいたのかガバッと起き上がろうとする。
「だめだよ寝てなきゃっ!熱すごいの、何かいる?喉渇いたりしてる…?」
「大丈夫だ、おまえ今日誕生日だろ…、」
「そんなのどーでもいいってばっ!」
「どうでもいいわけあるか……、せっかく、こうして祝ってやれるんだぞ、…大事な日なんだよ、」
それはきっと空白の14年間のことも言ってる。
やっと会えて誕生日をこうして祝えるそんな日が、彼にとってはずっとずっと大切なんだって。
初めて2人きりで祝う、大切な日。
私も本当はすっごく楽しみにしてた。
けど……いつもいつも本当にタイミングが悪くて嫌になる。
「絃…、移るかもしれねえが許せ、」
「へ…?いお───んっ…っ!」
ぐいっと後頭部に回った腕に引き寄せられて、熱を帯びた唇が重なった。
角度を変えて何度も何度も繰り返されて、いつも以上に熱い吐息が漏れる。



