「なぁーんだ、結局あのひと目当てかぁ。絃織さんなら屋敷のどこかにいると思うよー」
つまらなそうに陽太は独りごちた。
それにしてもわざわざ京都から出向いてくるなんて、そんなに会いたかったのか彼に…。
まさか新たなライバル出現の予感…!?
でも………さすがに勝てる気がしない。
もしそうだったならば、今回ばかりは譲ってしまうかもしれない。
この人だけはパーフェクトすぎる。
「絃、こんなところにいたのか」
「い、…那岐っ!会議はもう終わったの?」
「あぁ」
危ない、ここでは名前で呼んじゃ駄目だ。
ナイスタイミングで現れてしまった男は私と陽太の格好を見つめて、「また余計なことしてんのか」とため息。
しかしそのため息を消したのは千春さんだった。
「久しぶりだな、那岐 絃織」
ふんっと鼻を鳴らすようにして、彼へとニヒルな笑みを見せた千春さん。
しばらくの沈黙。
どうやら知り合いではないらしい……?
「忘れたなんて言うんじゃないだろうな?あたしだよ、佐伯 千春」
「…佐伯…?…お前がなんでここにいるんだよ」
「あんたが天鬼組の若頭になったって風の噂に聞いてな。どんなもんかと見に来てやったんだ」
「…変わらねえな、お前は」
え、…え…?知り合いなの…?
なんだろう、この2人だけにしか分からない空気感。
またこの感じ…。
「あたし達は高校の同級生なんだ」
私と陽太が聞くよりも先に答えが返ってきてしまった。



