「アイス…っ、アイス買ったのっ」
「…アイス?」
「うん、いっしょに……食べたくて…」
冷蔵庫に2つ買っておいたもの。
お風呂上がりに一緒に食べるつもりだった。
それなのにアイスよりもこっちが先だ、とでも言いたげな眼差し。
「絃、…嫌だったら言えよ。止めれる保証はねえが」
「っ…!、」
甘く囁かれた声は、そのまま耳をカプッと甘噛み。
そして熱い舌が激しくも優しく這った。
「ぁ…っ、…な、なに……これっ、」
パーカーから覗く首筋につうと指がなぞられて、ピクッと反応してしまう。
そのまま身体のラインへ沿って降りてくる。
「いおり…っ、だめ、…それ…ゃ…っ、」
ふわっと広がる大好きな香水の香り。
いつもと違うシャンプーの匂い、揺れる黒髪。
腕に付いた紫色のブレスレット。
そんなものを独り占めしていることに心は恥ずかしさと嬉しさでいっぱいだった。
「…甘ぇ、」
そんな声のほうが甘い。
なにその甘い声……。
いつも強引で俺様で、最初は怖かったのに。
それでも私にはいつも甘くて、今もまた違う甘さで。
冷たくて甘い、バニラアイスはこの人なんだって。
「んっ…、ぁ…っ」
チュッと触れたかと思えば、少し強めに吸われる痛みが走った。
それは髪の毛が散らばる隙間を見つけて印を付けるかのよう。
ひとつ、またひとつと、付けては離しての繰り返し。
「…いと、」
ダメだ───…。
こんなのもう、とろけちゃうよ。
指を絡めるように繋がれた手は力を加えたり緩まれたり。
甘い甘い時間は始まったばかり。



