光を掴んだその先に。─After story─





「ん、うめえなこれ」


「ほんと!?」


「あぁ」


「やったぁっ!」



隠し味にマーガリンとすりおろしたリンゴを入れて正解だった。

これは施設でみっちゃんが言っていた秘伝の味付け。

それを入れてしまえば市販のルーだとしても、コクとまろやかさが出て美味しくなるって。



「マグカップもありがとな」


「うんっ」



絃織は水色、私はピンク。

お洒落に「I」とアルファベットがデザインされたもの。


そこに注がれたオレンジジュース。


施設ではカレーといったらオレンジジュースがセットだったから、つい癖で買ってしまった。

子供っぽいかなって思ったけど、文句なく飲んでくれてる…。



「あ、でもゆで卵の殻剥きだけ失敗しちゃってね」


「そうなのか?ぜんぜん気づかねえしセーフだろ」


「えっ、じゃあ言わなければバレなかったってことじゃんっ!」



馬鹿正直に言うことなかった…。

それでも優しく微笑んでくれるから、これもこれでいいかなって思ったり。


手軽に作ったサラダにスライスされたゆで卵は、こう見ると分からないけど凸凹してる。



「明日と明後日は俺も休み取った。どこか行くか?」


「いいの!?えっと、うーんと、」



改めて聞かれると迷う…。

ふたりなら特別な場所に行かなくても全然楽しいっていうのが本心。



「…ふたりでゆっくりするってのもアリだが」



同じことを言ってくれた助け船。

私はこの人のこういうところが大好きだ。



「…うん。ふたりで、いたい」


「ん。」