それはもう瞬殺。

一瞬にして投げられた男の図体。



「す、すごい……」



まさかの背負い投げをして、手をパンパンと払っているその人。

こんなにも可憐な見た目なのに…。



「まったく、助けてくれなくても大丈夫だったってのに」


「ご、ごめんなさい…、ありがとうございました……」


「ふっ、どっちなんだ」



長い黒髪を下ろした綺麗系の美女だ。


桜子ちゃんや雅美さんとはまた違ったタイプの美人さん。

クールビューティーってやつ…。
男勝りなのに女性らしさもあって。


どうやら私は美人と縁があるらしく。

なんていうかこの人は、“麗しい”って言葉が似合ってしまうような人だ。



「あっ、あのっ」



ピリリリリリリ───。

スマホの着信音は聞き慣れないもの。



「悪い」



凛としていて孤高で。

高嶺の花って、たぶんこの人のことを言うんだ。



「こちら千春。───了解すぐに向かう」



スマホを耳に当てながらヒラヒラと私に手だけを振って、去って行ってしまった。


なにあの人……すっごい格好いい…。

美人で強くて、スーツが似合ってて。



「あの人に…なりたい……」



やっと見つけた。

彼の隣に立っていつかウェディングドレスを着るならば、ああいう女性にならなくちゃ。


千春(ちはる)と、言っていた。

彼女のような人になりたい……。