「髪下ろしたとこも好きだが、ポニーテールが絃って感じがして…かわいい」
「っ…、」
それ狙ってるの…?それとも無自覚なの…?
口説いてるの…?
私はいま、口説かれてるの…?
もし彼がホストだったとしたら、私は確実に沼にはまって貢いでしまっていたことだ。
「た、卵焼き作るから…!もう本当にっ!」
「あぁ、悪い」
なんか、これって新婚さんって感じだ。
結婚なんかぜんぜん考えたことなかった。
そもそもそういう相手すら夢のまた夢で、王子様に夢見てた高校生だったのに…。
そんな王子様は俺様で強引で、そしてすごく甘い人だったらしい。
「ど、どう……?」
The・玉子焼きが完成した。
弱火でじっくり焼いたし、ほんのり焦げ目が付いて見た目も問題はなさそうだ。
お洒落なガラステーブルに乗ったご飯と玉子焼きのみっていうのが、少し申し訳ないけど…。
「…うまい」
「では、お世辞抜きにしてもう1度どうぞ…」
「うまい」
「お世辞じゃねえよ」と、笑ってくれるその人は一切れを男らしく豪快に一口で運んだ。
ご飯を同じ分量入れて、モグモグと膨らむ頬が格好いいのにどこか可愛くもあって。
「でも桜子ちゃんの方が上手だったなぁ…」
盛り付けも綺麗だったし、あのだし巻き卵の美味しさは今でも覚えてる。
ふわっ、じゅわって感じだ。
それに主菜、副菜、汁物と完璧に揃えられていた。



