「おいしっ!!なにこれっ!」
「ローストビーフだって」
「これは!?」
「なんかのキッシュ?だっけな」
「んー!美味しいっ」
そんな私は。
気づけば目の前の料理に瞳をキラキラさせて、このパーティーを十分にエンジョイしてしまっていた。
だってシェフがその場で作って出来たてを持ってきてくれるんだもんっ!
こんなの食べなきゃ損だ。
「ここに桜子ちゃんがいたら、ぜったい喜んでたのにねー」
「でもそれって他の男にドレス姿見せるってことでしょ?そんなの無理だよねぇ」
陽太は意外と独占欲が強い…と。
でも確かに彼女がドレスなんか着ちゃったら、男の視線を一気に奪ってしまうことだろう。
でもこんなにたくさんのお料理が並んでるから幸せそうな顔して食べてたに違いないのに…。
「絃ちゃん」
「んー?」
「…ありがとう。いろいろと」
こういうしんみりした空気は私と陽太の間には無くていいものだ。
だから私はいつもの調子で笑って、「え?なんのこと?」って言ってあげる。
そうするとすべて伝わってくれるから。
「てかいいの?絃ちゃんこそ。あれすっごいよ」
陽太が指を差した先。
さっき見たときよりも多い人数に囲まれている男がひとり。
こういう場だからこそいつものように乱暴に突き放す接待はしてはならないらしく、彼は表面上穏やかな顔で受け答えをしていた。
「…だってしょーがないもん。そーいうものだもん。だから私食べてる」
「あははっ、やけ食いってことね」
そーだよやけ食いだよ。



