「ほら…」
「…ん」
「熱いからヤケドすんなよ?」
「うん…」
パタパタと少しだけ蒸気を逃してから、彼女はそのタオルをそっと目の辺りに当てた。
それから、少し間を置いて……。
「私…ほんとは、悠太のこと好きだったんだ…」
と呟かれる。
それは、突然の告白で。
意味を飲み込むまでに、2分…いや…それ以上掛かったかもしれない。
「なんで…」
今更、そんなことを?
そう言おうとして、彼女が口唇を噛んでいることに気付く。
「だって…先に彼女を作ったのは悠太でしょう?」
「って、お前それは…」
幼馴染の壁を崩すことはしない…。
そう、暗黙のルールみたいに決まってたじゃないか。
それは、俺だけが感じてたことなのか…?
「…弥生子は真宏のことがずっと好きだったんじゃないのか?」
「…確かに、憧れてはいた。でも、…悠太ほどには好きになれなかったの…!」
何もかもが、滅茶苦茶だ。
これじゃあ、埒が明かない。
俺は一言、彼女に問いた。
「彼女作った俺への当て付けで真宏と付き合った…?」
「だって……っ」
「じゃあ、なんで何年も浮気されながら、別れなかったんだよ…?」
「………」
きゅうっと噛み締めている口唇は、血が滲んでいる。
「お前、今日は色々あって混乱してるんだよ。家に帰って、頭冷やせ」
「…悠太」
「俺が、後ろ向いてる間に、帰れ」
「……っ」
かちゃん
それ以上彼女は何も言わずに、小さな音を立てて、部屋の扉が閉まった。
「はっ……」
俺は彼女のいなくなった部屋で、詰めていた息をやっとの思いで吐き出し、彼女から放たれた言葉を、一から思い出し組み立てて、泣きたくなった。



