貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~

「スパイに入ってても、やることは普通のことだろう。
 スパイが飽きずに楽しいという事態になることこそ、最悪だ」
とジンは言う。

 まあ、それはごもっとも、と思ったとき、

「……父にはなにもされなかったか」
とジンが訊きにくそうに訊いてきた。

「カーヌーンを弾いて歌っただけか」

「はい。
 それと、酌をしただけです」
と言うと、何故かジンは悔しがる。

「お前、私には酌をしてくれないじゃないかっ。
 私はしてやってるがっ」

「……し、しましょうか」
とアローナは慌てて、そこにあった酒瓶を手に取った。