「間に合ってますってなんですかっ」
と。

「そういえば、私の後宮にも新しい女が参って、なかなか楽しいぞ。
 実に上手くカーヌーンを弾く美しい女なのだが」

 シャナだな。
 シャナですね、とアハトと目を合わせて、アローナは頷き合う。

「……女のようで女ではないので、ま、手は出してはおらぬのだが」

 さすが……。
 バレバレのようですな、とまた目だけで会話する。

「私から見たらぬるい王だが、民や臣下はジンでよいのだろうな。
 アハトももう私を王とは呼ばぬし」

 アハトが言われて気づいたようで、ハッとしていた。

 いつもご機嫌伺いに言っては、王よ、と話しかけていたのだろう。

 そういえば、さっきから、レオ様と言っている。

 アハトは弁解はせずに、黙って頭を下げていた。

 レオはといえば、別に怒るでもなく、どうでも良さそうだった。

 警護のものを引き連れ去っていくレオを見送っていると、アリアナが言ってくる。

「もう王室御用達と看板をかけるかね」

「や、やめてください……」

 メディフィスの品位を疑われるので、とアローナは青くなる。

「なんだい、あんたたちも帰る気かい?」
とこちらを見てエメリアが言ってきた。

「もうちょっと働いていきなよ。
 アローナもアハト様も通訳とかできるだろ。

 よその国の人間が来たときに助かるから」

「雰囲気で話せますけど、読み書きはあまりできないので」

「この私がそんなことしたら、国の名折れになるだろうが」
と二人で言ったあとで。

「……待ってください、アハト様。
 私の場合、名折れにならないのですか」
とアローナはアハトを見る。