アローナは少し迷って、
「では、エメリア様で」
と言った。

 女主人、アリアナは、こちらを振り返って言う。

「そうだね。
 私はアハト様と金の話をするから。

 エメリア、その王妃様、黄金の間に通しな」

 そう言われ、彼女の側でアハトが渋い顔をして呟いていた。

「……だから、此処に来るのは嫌だったのですよ。

 ああでも、そうだ。
 私はアローナ様についていなければ」
とアリアナから逃げるためにか、アハトは彼女にそう言ったが、アリアナは、

「なにを言ってるんだい。
 砂漠辺りで此処ほど安全な場所はないよ」
と言う。

 それはそうかもしれないな、とアローナは広い吹き抜けの玄関ホールを見回した。

 真っ白な美しい建物のあちこちに、さりげなく目の()わった男たちが潜んでいる。

 何処よりも警備がしっかりしていそうだ。