そんな奴がいるならば即座に俺がジャッジしてやる。
こいつを守れるほどの度量があれば判断をしてやるが、それすらないひ弱な野郎であれば切り捨てる。
そもそもあいつはまだそういうのは何ひとつ分からねえようなガキだ。
……って思うが、考えられなくはない。
「あれ?那岐さんもしかしてヤキモチっすか?可愛い妹さんを取られて───いやいや冗談っすよ!!」
「ここでその話はすんなっつってんだろ」
「す、すみません…」
───…妹。
そうだ、あいつは俺の妹だ。
たとえ覚えてなくとも、血が繋がっていなくとも、そして一緒にいた期間が短くとも。
あいつを守るために俺は幹部までやっと上り詰めた。
『なぎ!なぎっ』
歩けるようになった足で、話せるようになった口で、一歩一歩俺へと手を伸ばしてくる幼き日の思い出。
「…俊吾、お前また彫ったのか」
腕を捲ったアロハシャツから覗く右腕に、鱗のような模様をふと見つける。
「あぁ、これっすか!」
まるでその言葉を待ちわびていたかのようにキラキラと瞳を輝かせる男は、俺より10は年上だ。
「出世の意味も込めて鯉を入れたんすよ!中々気に入ってるんです」



